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pkmn+α
ルカリオと



いつからこの胸にある感情は変化していたのだろう




頭を撫でる、細い指先を備えた小さな掌から優しい感情が伝わってくる。
メイはいつもそうだ。
ポケモンをただの道具としては扱わない。まるで人に対する時と同じように、大切な友人にそうするような、自然な対等さで接してくれる。
「ナナシ、今日はありがとう。プラズマ団との戦いでヒュウ兄やチェレンさんを助けられたのは、あなたのおかげだよ」
心からの安堵と感謝を感じて私は首を振った。
“…礼など、言う必要はない。特別なことをしたわけではないのだから”
人のものとは違う声帯でことばを発することは出来ないため、思念を送って語りかけるとメイは表情を曇らせた。戸惑うような感情が伝わってくる。
困らせたいわけではなかったが、プラズマ団との戦闘を終えてヒュウという青年に駆け寄り、その無事を確認したメイが見せたきれいな笑顔。心配や不安が払拭され、鮮やかに輝いたメイの表情が頭を離れない。胸に蟠る想いを底に沈めようとすれば距離をとるような言葉が口を突いて出てしまう。剣であり盾であればこそ、傍にいられる。それ以上を望むことは愚かだろうと、知っていた。
“マスターのために戦うこと、マスターの望みを叶えることこそが我らの役目で、存在理由だ”
「ナナシ…。わたしはまだ未熟だからあなたたちに頼ってばかりだけど、でも絶対に戦わせることだけが目的であなたたちと旅してるわけじゃないんだよ」
メイは真剣で素直な視線を真っ直ぐに合わせてきた。鋼の色と強さを秘めた瞳に射抜かれる。
「ともだちだから、一緒にいたい。一緒にいろんな場所を旅していろんなものを見て、そこで感じたことを分け合っていきたい。だから、戦うためにいることが存在理由なんて思わないで」
―――《ともだち》、それは望むカタチではなかったが…、
そっと肩を掴んだ彼女の手の温かさが信じさせてくれる。
きっと、私が危機に陥った時にも、メイはヒュウという青年にそうしたように心配してくれるだろう。大切に思われてると伝わってくる。
「いつも、ありがとう。わたしはもっと、ちゃんとしたトレーナーになるから。だからこれからも、傍にいてね。それでいつか…あなたもわたしのこと、ともだちって思ってくれたら嬉しいな」
他者の感情を読み取れるはどうポケモンの私には、そこに欠片ほども偽りがないことが分かってしまう。
他の誰よりも傍にいたい、一番近くで笑っていてほしい……これが《友》に向ける感情ではないことを自分が一番わかっている。持つべきではなかったことも、わかっていた。
私の種族がリオルから進化をするにあたって、主との間に強い絆を必要とすることからも惹かれていくのは必然であったのかもしれない。しかしそれは、主に対する忠誠心と信頼であるべきで、嫉妬じみた独占欲など持つことは赦されることではないのだろう。
だから、この気持ちは封じよう。《友》であることをメイが望むなら、そう在ろう。
“それが、メイが望みならば――…”
少し淋しそうに微笑むメイを何よりも大切に想うから。

願うことは一つだけ――…・・・




ど 
う 
か 
  
ど 
う 
か 
 


傍において




君だけの僕でいたいから


傍らに在って守ること、
それ以上を望みはしない――。







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あきゅろす。
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