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キミのせなか(サトシとユリーカ)




終の洞窟で見失ったプニちゃんを再び探すことになったあたしたちは壊れかけた橋を駆け抜けた後、また森の中を歩いていた。
プニちゃんは、きっとあたしたちを待ってる。
ぜったいに見つけて守ってあげなくちゃ。
――――だって、あたしはプニちゃんに約束したんだから。


守ってあげる。
そう約束を思い出したあたしは、終の洞窟で起こったことも同時に思い出す。

『――危ない!』

プニちゃんを助けようとしてフレア団の前に飛び出したあたしを引き寄せて守ってくれた腕。
「……あ」
大事なこと、伝えてない。
あたしは前を行く背中を追い付くために駆け出した。
「…サトシっ」
「ユリーカ。どうした?」
ジャケットの裾を掴んだあたしを振り返った少年は肩越しに振り向くと少し笑う。
「あのね、お礼、言ってなかったから」
「おれい?」
まるで心当たりはないといった不思議そうな顔で首を捻るサトシに今度はあたしが笑って、言いそびれていた言葉を伝えた。
「終の洞窟で助けてくれたでしょ。だから…ありがとう」
「何だ、そんなことか」
サトシの手があたしの肩を叩く。
「そんなこと気にする必要ないって。俺たち仲間なんだからさ。危なかったら助ける、当然だろ?」
真っ直ぐな言葉と力強い笑顔はおひさまみたいだ。
いつもあたしたちの前に立って引っ張ってくれる――サトシは明るくて、強い人。
「…そっか……うん。そうだよね。あたしももっと勉強して色々できるようにならなくちゃ」
「何言ってるんだよ」
みんなが大変な時、その時はあたしがちゃんと力になれるように。
そんな気持ちで言った言葉をあっさり返されてあたしはちょっとむっとしたんだけれど――反論らしいことを声にする前にさっき肩を叩いた手が今度は軽く頭の上で跳ねた。
「ユリーカはもう充分過ぎるぐらい俺たちを助けてくれてるじゃないか」
「…え?」
「俺たちが特訓してる間とか、いっつもポケモンたちの面倒見てくれてるだろ」
「ピーカー」
サトシに同意するとばかり、肩の上のピカチュウが鳴く。
「ははっ、ピカチュウはユリーカと仲良しだもんな」
「ピカチュウ!」
「サトシ、ピカチュウ…」
何だかあったかい気持ちでいっぱいになって、それを上手く言葉にするのは難しくて続きを失ってしまったあたしはただこくこくと頷いた。

「――サトシー、ユリーカー?」
「どうしたんですかー」

少し先を行っていたお兄ちゃんとセレナが遅れたあたしたちに気付き、振り向いている。
「いっけね。…悪い、何でもないんだ! 今行くー!」
叫び返したサトシがこっちを向いた。
「行くぞ、ユリーカ」
笑って。サトシはあたしの手を引いて走り出す。
「みんなで絶対プニちゃんを見つけてやろうぜ!」


ぐんぐんと後ろに流れていく緑の景色。
お兄ちゃんと同じように大きくて優しい手は、でもお兄ちゃんとは違う強さを持っている。
どこまでも遠くに行けそうな背中と、繋がれた手の温かさ。
これまでどんな無茶なことだって何とかできるって全力で教えめてくれた。
きっと、それはこれからも――。






キミの背中とてのひらの温度





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あきゅろす。
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