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ゼクロムと手持ちたちと






昏い空を背景に、蒼白い雷光を纏った漆黒の竜。こちらを見下ろす紅い双眸に宿る感情を読み取ることは困難だけれど、わたしの事を認めてないのだけは分かった。
「…信じられないのは分かる。突然わたしの手持ちになれって言ったって、訊ける訳はないよね」
激しく空気を擦り、空間を明滅させる程の青雷は威嚇のよう。
目を灼く閃光、耳を貫く雷鳴。畏怖すら芽生える伝説のポケモンに相対し、無意識で下がりそうになる足を踏みとどめる。
緑の髪の青年――Nはこのゼクロムをトモダチだと言った。不思議な人。イッシュ地方のあちこちに英雄としての足跡を残しながら、会ってみれば子どものようだと感じた。
知識だけを詰め込まれ、頭だけで世界を視てる感じ。
ポケモンとの関わり、人との関わり。
どちらだけが幸せでも、世界は歪なのだと思う。
あの人はその片鱗を知ったから旅立つことを決めたのかもしれない。理想を求める者に力を貸すという、ゼクロムから手を離して。
「…わたしには、まだ理想なんて語れることはないかもしれない。あなたが求める、人の心を視せることもまだ出来ないと思う」
誇れるだけの知識も、経験も足りてない。
わたしだってまだ何の力もない、ただの子どもだ。
「だけど……世界を見て、ポケモンたちのことを知って、いつか自分の理想を自分の言葉で語れたらいいと思う。ゼクロム――」
わたしは強く、強く、緋色に浮かぶ金の眸を見詰めた。
「それを見届けて欲しい」
じっとわたしを見下ろしていたゼクロムの口から響いたのは、轟雷に似た咆哮。
覚悟と意志を示せ、と。そう言われた気がした。
手に握りしめたモンスターボールが呼応して挑むように震えている。
一つ頷いて、わたしは笑った。
共に歩んできた時間との中で育まれたもの。
そうして友達になっていくなら、ゼクロムとだって築けるはず。
「意志は、バトルで示す。それで少しでも認められたら、一緒に来て。理想を求めるというあなた自身の目で世界を見て。人の暮らし、ポケモンたちの実態。一緒に知っていこう。そして、Nと再会しよう」
その時は誰もが寄り掛かるだけじゃなく、見たこと感じた事を語り合えたらいい。
目には見えないものを見たいと言ったN。でもそれは、ちゃんと世界の姿を知ってこそ辿り着けるものだと思う。
知りたいこと、知らなければならないことを求めて探して、わたしたちは旅をしている。
チャンピオンとか、ポケモンマスターとか、そういったものは過程でしかなくて。
人と、ポケモンと、大地を踏みしめて自分の足で歩いて見たことのないものを目指してる。
その先に、きっと何かがあるんじゃないかって思うから。
――言葉は届いただろうか。
ゼクロムが金属質の黒い翼を広げる。宙に散る雷光が眩しさと、激しさを増した。
受けて立ってくれたなら、わたしも全力で応えなきゃ。
本当はちょっとだけ恐いけれど。
「…でも、君となら大丈夫だって思えるよ。力を貸してね、ジャローダ」
わたしの友達であり、心強いパートナー。
旅を始めた時からずっと一緒だった。これからも、一緒にいたい。
想いを込めて、モンスターボールを投げる。
現れた新緑の優美な姿。気高い榛色の双眸は信頼を込めてわたしを映してくれるから。
彼に相応しいマスターでありたい。
紡がれた絆は、モンスターボールを通してだけのものじゃない。
「見せてあげよう、ジャローダ」
人とポケモンの間にある感情、それはたぶん、そんなに大きく違いはしないはず。
Nだって本当はもう気付いてるんじゃないだろうか。心無い人間も、欲のためだけにポケモンを操ろうとする人間も確かに存在するけど、それだけじゃないって。
お互いを大切に想い合ってる。
ゼクロムとNもそうであるはず。
だから、わたしはゼクロムに認めてもらって、一緒に旅をしたい。離れた間に気付いたものを再び分かち合ってもらうためにも。
「距離も時間も飛び越える喜び、教えてあげるから」




たちむかうおはなし



思い出を、成長を、
再会した時に見せること。

それを約束に――。














…とか何とか考えてみたけど、ゼクロム戦直後にひょっこりNが姿見せるから台無しだよ!(笑)。



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あきゅろす。
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