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FunnyShortStory
黄巾賊(とヨシヨシ)



馴染みのゲーセン。電子音と喧騒に溢れた賑やかさの中、周りがそれぞれプレイに熱中し盛り上がるその場で谷田部は筐体の横に寄り掛かり、もの凄く真剣な顔でケータイとにらめっこしていた。
「…何あれ、谷田部さんどうかしたのか?」
随分前から動かない様子はさすがに不審で、八重歯の目立つ青年は曲の終わりと同時に桴を筐体に戻すとニット帽の青年に声を掛ける。
「三好が」
「三好? まさか連絡待ちとか言わないよなー」
遊びも手に付かないとかになれば末期症状絶頂期だ。そこまで行ってしまうのはどうだろう。
軽い口調で訊きながらも冷や汗が流れそうな気分になっていた八重歯の青年に、しかしニット帽の彼は首を横に振った。
「逆。三好に連絡取ろうとしてる、頑張って」
「…はあ?」
盛大に疑問符を飛ばした八重歯の青年に、ニット帽の青年はため息をつく。説明するのは、非常に億劫だった。


もう何度も何度もメールを打とうとしては手が止まる。嘗てない緊張に指先が震え、力の入った肩が凝りつつあった。
最初の挨拶すらどうしていいのか分からない。こんなにも頭が真っ白になる経験がこれまであっただろうか、いや無い。
「…くそっ、メールってどう打つんだ!?」
『………………』
ツッコミどころ満載の、しかし切実な叫びに近くにいた黄巾賊たちの生温かい視線が谷田部に集まる。
本人は至って真剣な分、周囲をどうしようもない気分にさせていた。




事の発端は三日前。赤茶色のくせっ毛につり目がちの飴色の双眸、白いパーカーがトレードマークの少年の一言にあった。

「…そういえば、谷田部くんから連絡もらったことってなかったよね。―――…待ってるから」

そう、相手から待ってるとまで言われたのだから、メールぐらい軽く送ればいい。
しかしその相手が三好と言うことが何よりの問題だ。
時間は今送っても大丈夫か、迷惑じゃないか、文章はおかしくないか…考えるほどにぐるぐるして指先が動かなくなる。
こんなことは初めてだった。




「…いつでも軽く送れるのがメールじゃねー?」
ほとほと不思議そうな八重歯の青年の一言が、その場の全員の気持ちを代弁していた。











あらしのよるにパロ。



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あきゅろす。
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