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甘ったるいのは嫌いなの(臨也と)



都会の真ん中とはいえ探せば色々と風流な景色に出会えることを、散歩が趣味と言っていいぐらいの仔猫は知っているらしい――。


賑やかしい大きな通りからいくらも離れてはいない、住宅街の狭い小路を一本抜けた先。庭先に植えられた多色の紫陽花が雨に濡れて水に滲むような風情をかもし出している。
紫陽花。花の色は土壌に含まれる酸性濃度によって幾多にも染め変える、その別名を七変化――。
土に手を加え吸収される成分を調整してやれば変色を促すことが出来る花のように、この少年もまた、周囲の環境へと干渉する事で思いもよらない色へと変貌を遂げるかもしれない。
どのような影響も受け流し、何ものにも染まらない白が、混沌とその色を変えていく様はきっと見ていて楽しいだろう。
変化を齎すのが自分の手によってというなら尚更に。
臨也は傘の下に隠れた少年の透徹した眼差しを想い、口端だけに嗤いを刻んだ。


「――楽しみだよ、三好君。これからの池袋で、君がどんな色に染まっていくのかと思えばね」




甘ったるいのは嫌いなの



この手の中に堕ちてきなよ。



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あきゅろす。
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