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ほのぼの

秋は肌寒い。
肌寒いが故に、だんだんと寒さに応じて厚着をするようになる。
個人的には毛糸の手編みセーターがお気に入りだ。





「なんだぁ。またそんな厚手のセーターなんか着て」
「…見てわからないの。僕、寒いんだけど」

ネックまであるボーダーのセーターをくいっとたくし上げる。
ある程度ならサイドの長い髪が肌を隠してくれるが、刈り上げの後頭部は多少の寒さを感じるからだ。
暖房器具が一切置かれていないこの部屋は、厚着をしていないと居られないほどに乾燥し、冷えきっている。

「昔から子供は風の子って言ってな、」
「やめてよ。もう子供じゃないんだから子供扱いしないでくれない」

子供、子供って…見た目からして言ってるの?
一体何の根拠があるっていうのさ。
そりゃアンタとは多少の体格差はあるけどさ、第二次性徴に入ればすぐにでも追い付いて抜かしてやるんだから。
ああ、もう一緒に居てイライラするんだよ。
アンタのそういうお節介な世話焼きで、鬱陶しいところ。

「そんなこと言うなよ。寒いなら俺のガウン向こうから持ってきてやろうか」
「ちょっと、そんなこと誰も頼んでないんだから触らないでくれる」

伸びてきた手を振り払おうと、手を払った。
ムキになって仏頂面のまま、一思いにパシンッ…と。

「…ッて、」

ビリッと手と手が触れ合った瞬間に起きたのは、摩擦電気。
それは一瞬で二人の間を引き離した。

「なんだ…静電気か。ビックリしたな」

…何で、そんなに、笑って、いられるの。
どうしてかイライラする。
少しばかり先程のイライラとは性質から違う、何か別のもの。

「何なのさ、ふざけないでよっ…」

どうして静電気ごときに離されなくちゃいけないの。
怒りがこんなにも底の方から込み上げてくる理由は、何。
訳が分からなくなる。
頭の中がスパークしてしまったかのように、収拾がつかない。

「…認めないから」
「ん、どうしたんだ?」
「こんなの、認めない」

この、感じたことのない感情は何なのか。
どこにぶつけたらいい。
ぶつけていいものなのか。
…誰に、目の前の、この男に?

「認めない」
「あ、ちょ、え…シンク、さん?」

するすると脇腹に仕掛けた手を移動させ、衣服をたくし上げる。
胴体だけ、腕にはまだ手を掛けず。
見えてきた締まりのある整った腹部に多少の苛立ちを覚えた。
鍛えても鍛えても割れてくれない自分の腹筋に、何がいけないのか、と問いかけてやりたい。

「な、何故脱がせているのでしょうか…」
「邪魔だから」
「じゃ、邪魔ぁ!?」

身につけている衣服は邪魔だ、と。
これから行為をするために邪魔、というのは紛れもない事実だ。

「…それで、何でお前は着たままなんだよ」
「寒いから」
「やっぱ子供じゃないか」
「うるさいよっ」

ほぼ相手を押し倒した状態で身体に乗り上げた。
脚の間に入り、胸の上までで動きを止める。
胸の飾りが突起していることが伺えた。

「…乳首、勃ってんだけど。脱がされて変な気分にでもなったの」
「脱がされて寒いからに決まってんだろ!」
「本当に?」

クスクス、と含み笑いをする。
確かに部屋の温度は肌寒い。
セーターを着ている自分が肌寒いという程なのだから、そうなのかもしれない。

「ほら。ふざけてないでどけよ、もう」

つん、と口を尖らせる。
不愉快だ。
これからが楽しいところだと言うのに。

「僕はアンタが期待してるからだと思うんだけどね」
「…お、いっ…」

晒されている片方の胸に口を落とした。
下から上へ、ワンウェイに尖ったそれを舐めていく。
たまに甘噛みをすると、声を抑えるように唇を噛み締める様子を見るのが優越感のようだった。

「しぶといよね。感じてるなら素直に声、出せばいいじゃん」
「誰も感じてなんかっ」
「嘘。身体はちゃんと正直なんだから」

本人は否定をしていたが服越しに性器に触れる。
すっかり腫れているそこを、どのように説明してくれるのか。
やんわり掴み、そして揉む。
胸も愛撫を続けると何度か色香を撒く吐息が聞え出した。

「ぁ…くぅ、あ…」

なかなか、満更でもないのか。
皮肉にも主張とは異なり、自然と腰が揺れ出していることに本人は気付いていないのか。
それとも気付けて、いないのか。

「シン、ク…ふっ、んん」

とろん、とした瞳で見つめられた。
腕に握られていた手を取り払い、とうとう上肢全ての衣服を脱がしていく。
お次に下肢に手を付ける。
いとも簡単にスラックスは脱がすことが出来、それを膝の辺りまで下ろす。

「ほぼ、すっぽんぽんだね。寒くないの。それとも火照って熱い?」
「誰の、せいだっ…」

納得のいくような表情ではなかったものの、首に腕が絡みつく。
それは求められている証拠だった。







「うわ、キツ…」

解したはずのそこは、性器を宛がうと窄まってしまう。
まるで侵入を拒むような、むしろそれを歓迎していることからなのか。
入口が見えやすいようにぐい、と脚を左右に開かせる。

「深呼吸してよ。僕、痛いの嫌だもん」
「こっちだって、毎回毎回挿れられる側は痛いんだ」
「良く言うね。年下に組み敷かれて悲しくないの?」
「ッ…!」

反抗的な目で睨まれた。
お構い無しに行為を続けるとその目はきつく閉じ、唸り声と一緒に眉間が寄った。
先端が、穴の中に埋まったからだ。

「痛いのなんて、最初だけでしょ。後はだんだん気持ち良くなってくるんだから」

痛みで少し萎えてしまった性器を握り、上下に擦っていく。
徐々に、そして元気に勃ち上がってきたその先端からは透明な先走りが垂れている。

「あ、ぁあ…シ、ンクやめ、…ひッ、ぐぅ」

指の腹で溢れ出してくる先端口を責めた。
爪を立て、先走りをすくうと感じるのか、穴の締まりが画然と増す。
その内壁を押し開きながら性器を進めていくことが何とも快感である。
勿論、歪んだ表情を見つめながらすることを忘れない。

「…やっと、根元まで全部埋まったけど。感想は?」
「んな、痛ッ…!」
「言わないの?それとも言えない?このまま、動くけど」

一気に腰を引く。
やっとの思いで埋めた性器はカリで内壁を擦った。
そのままギリギリの抜き差しと、規則正しいピストンを繰り返す。

「…あ、バカ、まだ早っ…!」

気持ちが浮ついていたのかもしれない。
そんなことは重々承知だった。
もしかしたら、心を満たすためだったのかもしれない。
途中で故意的ではないものの、無機物なものに、二人の距離を邪魔されたこと。
二人の仲を一瞬で引き裂いたもの。
二人を引き離す、邪魔なもの。

「何で、こんなにっ…」
「ひ、ぁ…そ、こッ、ぁああ!」

胸が、苦しい。







「あのなぁ、シンク。一つだけ言っておく」
「何」

情事後、散々喘がされた本人が腹をくくったかのように忠告をしてきた。
しれ、とした態度をとると、わなわなと身を震わせていた。

「頼むからいつでもどこでも盛るのはやめてくれ」
「無理」

表情を一切変えず、意見を却下すると流石の温厚な彼も青筋が立っているのが伺えた。
想いは一直線だから。
嫉妬の対象が人であっても、物であっても架空のものでもイライラする。
離れたくないから。
離されたくないから。
二人の距離を邪魔するものでも、嫉妬する。

「無理、じゃない!床で散々やってくれたおかげで腰が痛くてしょうがない。お前は我慢というものを少しは覚えろ」
「覚えたら我慢しなくていいの」
「そういう意味じゃないだろ…」





end.
2010/12/26

(あとがき)
冒頭での「秋は肌寒い」という文章が、この小説の書き出しが秋だったのを物語っています…。
本当は静電気で二人が引き離されて〜、というところで終わりの予定でした。
しかし、このままいけば裏までいけるのではないのか、と思いまして温いですが裏まで書きました。
シンガイは正直あまり書いていないので(好きですけどね!)、楽しく書けました。
特に、シンクの会話部分の皮肉っぷりには力入っています^^
ガイがただの可哀想な人です(笑

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