長編小説
C ユキ視点
学校に着くとまだハルは来ていなかった。
昨日遅かったし遅刻かサボリだな。
ハルにはよくあることだ。
クラスメイト数人と昨日のテレビ番組の話をしながらそんなことを思った。
俺とハルは学校ではほとんどといっていいほど接点がない。
同じクラスだけど、俺はクラスで仲のいいグループで行動して、ハルは大抵1人。
いじめとかじゃなくて、近寄りがたいんだそうだ。
ハルも全然気にしてないし、むしろ楽だって言っていた。
だから俺もあまり学校では話しかけない。
「ねぇ、今日も高城くん休みかな?」
クラスメイトの一人がハルを話題に出す。
「どうだろうねぇ」
誰かがそれに答える。
「高城くんてさ、ミステリアスだよねぇ」
…なんじゃそりゃ。
「分かるぅ。めっちゃ可愛いけどかっこいいし、私生活とか想像できない。」
いやいや、毎日信じられないほどのグータラ生活ですよぉー。
俺の心の中のツッコミが追いつかないくらいのペースで話が弾んでいる。
ふと、ハルの本当の姿や生活を知っているのは俺だけだと思った。
ちょっとした優越感。
ハルの家に毎日行って、一緒にごはん食べて、テレビ見ながら笑いあって、たまに同じベッドで寝たりもする。
そんなことしているのはこの世界で俺だけなんだ。
そう考えるとなんか嬉しい。
そこまで考えてその考えを打ち消すようにあわてて首を振る。
…ダメダメ。別にハルは俺だけのものじゃないし!…てか、俺だけのものってなんだよ。ハルはものじゃないし。
あー、俺って本当性格悪いよなー。
「ユキー?おはよー。どしたー?」
ふと我に返ると学校で一番仲の良いキヨが俺の顔をのぞき込んでいた。
「おはよー。どーもしてないよー」
「そう?ならいいけど…」
そういうとキヨは、未だにハルの話をしているクラスメイトに気付いた。
「あー、高城の話かぁ。あいつモテモテだからなぁ。確か3年の先輩と付き合ってるんだっけ?」
俺の席の前のキヨは鞄から教科書を出しながら机にしまっていく。
「んー、付き合ってないらしいよ。ただHしただけだて。しかもそれ1カ月も前の話でしょ?」
準備の終えたキヨが振り返る。
「何それ。ただのセフレってやつ?最悪だな。」
その言葉に俺は苦笑するしかない。
「てか、ユキって高城と意外と仲良いよな」
「うん?まぁよく家に遊びに行くからね」
「ふぅーん。別に良いけど、ユキは高城みたいにはならないでほしいな。」
キヨの言ってることが理解できなくて首をかしげると
付け足すように言ってくれた。
「乱れた性生活をしているような高城みたいになってほしくないの。純粋なユキのままでいてねー」
っていうと俺の髪をわしゃわしゃっとした。
「んもー。俺なんかHしたくても相手がいないよー」
って言うと、キヨは、確かになーなんて笑いながら前を向いた。
いつのまにか先生が来ていて授業が始まる寸前だった。
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