After the Rain 09/神リナ 今日も放課後、アレン君は昇降口で傘を持って立っていた。 「もうすぐ梅雨も明けるみたいですよ」 そんな他愛のない話をしていると、目の前に神田とあの子。 思わず立ち止まってしまった。 また、心の底に沈んでいたあの感情が浮き上がってくる。 ―やっとこの気持ちが消えかけていたところだったのに。 複雑な顔をしていたんだろう、アレン君が私を見て、そして言った。 「僕じゃ、だめですか?」 「…え?」 「神田はあの部長さんと付き合っているんです。それからずっと、僕はあなたと一緒にいた。あなたにはもう、そんな顔してほしくない。だから…」 頭が混乱する。 確かにアレン君はずっと一緒にいてくれている。優しいし、でも、 アレン君がとても真剣な目をしていて、目をそらしてしまった。 そうすると目に入ってくるのは神田たち。 あの子は電車通学だったのだろう。 ちょうど駅で別れて神田が1人歩きだしたところだった。 ふと感じる、違和感。 考えればすぐにわかった。 神田のさしているあの傘。 濃い緑と紺のチェック。 ―なんで…今日朝窓越しに確認したのは確かに黒だった。 心臓の音が大きく聞こえる。 ―だって、あの日だって黒い傘をさしていて、 そこで気づく。 ―あの日は夜遅くて、雨で暗くてよく見えてなかった? じゃあ、この傘は、 「あ、雨止んだみたいですよ」 アレン君がそう言って傘を閉じる。 周りの人もみんな傘を閉じはじめている。 神田が閉じているのは、―折りたたみ傘だった。 わかった。わかった、わかった。 やっと、わかった。 「アレン君、この傘、神田のだったんだね」 それだけを言うと、彼の顔も見ずに駆け出した。 |