After the Rain 07/神リナ
なんてことだ。
こんなに雨が降っているのに傘を忘れてしまった。
またあの傘が置かれてしまう。
もう、見たくないのに。
朝、いつも通り神田が通るのを確認して(まだ続けている。朝はさすがにあの子と一緒じゃなくて少し安心した。)ついいつもの流れで来たから置いてきてしまったのだ。
相変わらず神田はあの子と一緒で、姿を見るのは授業中くらいだ。
ふと神田の横顔を見る。
前から授業は真面目に受けてはいたが最近はもっと真面目になったのではないだろうか。
―これも勉強が得意なあの子のおかげ?
そんな神田とは反対に自分は授業に集中できなくなって、早くなんとかしないと、と焦るばかりだ。
―いい加減神田のことを想うのはやめよう。
そればかりが頭の中をぐるぐると回っていた。
放課後、雨はまだ降り続けていて、いつまでたってもやむ気配はない。
とりあえずあの傘はもう使わない。
それだけを心に決めて昇降口に向かう。
ちら、と傘立てに目をやると黒い傘を持った人影が私の傘立てのところにその傘を入れようとしていて。
あれは…
「、アレン君?」
肩がびく、と震えて振り向いた彼は驚いた顔をしていた。
「あなただったの?」
数秒の沈黙の後、彼は確かに「はい」と答えた。
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