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Short-short
考えるだけで気が狂いそうだ

それは見るもの

頭からかけられていた布が落ちる
「みーつけた」
気持ちが悪すぎる笑みを向けられて俺は息を呑んだ
刹那、男の顔が見えなくなって生暖かい液体が顔に掛かる
「一人取り逃がしてました、申し訳ありません谷陽様」
かけられていた布で顔を拭われて、錆付いた匂いにそれが血だと理解した
と同時に布は礼音のローブでだったことにも
「殺しましたよ」
俺が見上げた矢先、告げられるのは礼音の口癖にもなった言葉
裏を返せば、それは安全になったという暗号。
「うん」
礼音の頬を両手で掴んで安否を確認した俺は頷いた
諦めたというほうが正しいのかもしれない
「もう、いいんだ」
胸中で言葉の続きを叫ぶ
(お前が無事なら何でもいいんだ)
「谷陽様」
手を伸ばして礼音の体を抱き寄せる
困った様に伏せる瞼に唇で愛撫をした
「したい、なあいいだろ?」
どんなに言葉を交わしても満たされない
「殺し文句ですね」
俺の腕の中、くつくつと上品に笑う礼音が覆いかぶさる様にキスをしかけてくる
後何回
礼音とキスが出来るだろう


『考えるだけで気が狂いそうだ』



命の危機と背中合わせだからこそ、彼らは全力なんです
終われば。


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