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※意趣返し
ふと、浮上した意識のまま白蛇は目を覚ました。

俯せの状態から腕を立てて体を起こした白蛇は、肩を撫でる初春の空気に体を揺らした。
早朝を思わせるひやりとした冷気はまだ冬を思わせる。
するりとシーツが音を立てずに白磁の肌を滑り落ち、白磁の肌から熱を奪う。
まだ寒いと独り言を零して、隣で眠る獣を起こさぬようにと再び体を沈めてその顔を覗き見る。ここの所、ランクの高い鬼の討伐にと駆り出されていたからか、常なら白蛇の些細な動きを感じ取るたびに静かに目を覚ます月光が、安らかに眠っていた。
「ふふっ」
堪えきれなかった笑い声を揺らして白蛇は随分と長い間黒く染まっていない左手で、月光の散らばった黒髪をなぞった。
髪の一本まで上等な作り物のような月光の襟足を一房
指先でもて遊べば持ち主と同じくつれない毛が逃げていくのが面白くて何度か同じ動作をした白蛇は未だに目を覚まさない月光に次の悪戯をと指を伸ばした。

指腹で触れた肌は存外暖かく白蛇の指を甘受した。
頬からそっと鼻にかけてきめの細かいさわり心地のいい肌の上を緩く動かす。
伏せられた瞼を縁どる短い、けれど美しく伸びる睫。その奥には白蛇が一等好きな黒曜石が眠っている縁をなぞってそれでも足りずに眉間から伸びる高めの鼻梁、薄い唇を順に辿り、間詰めていた吐息を白蛇は漏らした。

悪戯とはいえ、眠っている月光を起こしてしまうかもしれないという背徳にも似た恐れを抱いて、名残惜しむ指先を月光から指を離そうとゆっくり引っ込めようとした時だった。

「えっ」

先ほど触れていた肌よりもずっと暖かい月光の手に握りこまれた指先が、手のひらが、緩慢な動きで月光の唇に触れた。
まるでドラマのワンシーン。
ぶわっと、理解すると同時に白蛇の体に朱が咲いた。
存外柔らかい唇が触れた所から火を点けられた様な熱が直ぐに体中を巡り、心臓が煩く鼓動をうつ。
逃れようと手を引いたものの掴まれた手は簡単に逃がしてもらえない。そのまま空いた手で腰を引き寄せられ、体が密着する。
自然と月光に乗り上げる体制で固定されると、白蛇はやけに近い距離に瞠目した。

「い・・・いつから、お、お、きてっ」
「随分と楽しそうだったな」
動揺が隠せない白蛇は辿々しく言葉を紡いだ。せめてもの逃げだと俯いて赤くなった顔を隠そうと月光の首に頭を押し付ければ頭上から小さな笑い声が聞こえた。
機嫌がいいらしい月光の声音に羞恥よりも興味で白蛇が見上げれば、朝日を背負った獣が口端を緩くあげて喉を鳴らしていた。

黒曜石を思わせる双眸が普段よりも暗色を滲ませる。
刹那。

白蛇の視界が黒一面に覆われた。
体制が入れ替わると重力に従って流れ散る黒髪が、天蓋のように降り注ぎ白蛇の白とシーツの海で絡み合う。

喰われる。
白蛇はそう、頭の片隅で思うと同時に戦慄く喉に噛みつかれて伝播する痺れに思わず掲げた両腕を月光の首に回した。

「ん、やぁ」
時間をかけて昨夜散々蕩けた体は焦れるほど長い愛撫を受けた体は月光を簡単に受け入れた。
胸の尖りを甘噛みされると腰が震えて白蛇は甘い嬌声をあげる。
口内で飴玉のように転がされ、噛まれ、嘗められるたびに反る背中に熱い掌が這う。

「ぁあ、あっ・・・げっかも、ほしい、げっか、」
早く触れたいと焦れた感情のままに訴える白蛇は月光の頭を抱える力を緩めると月光の熱に触れ自身の窄みに導く。

ぐっと、距離を詰めて月光の肩口に犬歯を立てた白蛇は
嬌声を堪えると体を大きく振るわせた。
白蛇の腹が白濁で濡れたのに気づきながら、月光ははくはくと、息をする濡れそぼった唇に誘われて口づける。
薄く鉄の味がした。
「あ、っんん・・はぁ・・・」
軽く舌を合わせてから、嬌声を押し殺した呼吸をして快楽の海を耐える白蛇を月光は待てやれなかった。
無意識だとわかっていながらも煽るような白蛇の表情は行為の為か頬を薄ら赤く染め目元を濡らし、受けた快楽をそのまま月光に伝える様に後孔が締め付ける。
その上、時々口腔から紅が覗くのだから、白蛇のその細い腰を強く自分に寄せると戦慄く腹の中を容赦なく突き上げた。

「やっ・・・まって、げっか」
月光の鍛え上げられた胸を力の入らない手で押す白蛇はそんないじらしい行動をする事で余計に月光を煽っているとは思いもしないのだろう。
現に白蛇は己を突き上げる飢えた獣が眼を眇めて舌なめずりをする様子に見惚れ、意図せずに襞を収縮させた。

「はっぁ、ぁあ、やっあ・・・」
白蛇が嬌声を堪える度に白が舞い、シーツが波をうつ。
月光の腰に絡まった両足が奥をつかれるたびにつま先が空を蹴る。
逃げ道を探すように月光の首に額を押し付けた白蛇がその首筋に食いついた。
ちゅっと、かわいい音を立てて鬱血を残す唇から赤い舌を覗かせて痕をなぞる。
「煽るな」
そう制しながら月光は一つ舌打ちを零した。

喰らっているはずだと言うのに気を抜けば喰われる側に堕ちそうになる思考を引き留めて月光はその柔い細腰を両手で掴むと襞を抉るように突き動かす。
最奥を突かれる度に嬌声を上げる喉がのけぞるとシーツに散る白が踊る。
逃がさないとばかりに締め付けてくる中から先端部分だけを残して腰を引き抜けば、仕込んだ通りに肉が絡まり圧をかけてくる。
「いい子だ」
そう一言言い置いて、月光は白蛇の体内に括れから先を残したまま白蛇の足を持ち上げ、膝がベッドに着くほどまで折り曲げた。
必然的に服従する犬の体制になった白蛇が身震いすると同時に一層締まった襞の動きに月光は喉の奥でせせら笑った。

「ぁあっ、ぁああ、っはぁ・・・ああっ!」
より深くなった早急な挿入に白蛇は背を反らして甘い声をあげながら快楽を逃がそうとした。
根元まで咥え込んだ熱の質量に額に汗が湧き出る。
強すぎる快楽に震える白蛇にかまわず、月光はうねる中を好きに暴れまわる。
的確にしこりのような脆い所を突かれて白蛇の反り返った楔からとろとろと蜜があふれる。
頭の奥を直接揺さぶられている気さえする激しさに抑え込むことも出来ない声をあげて白蛇は乱れるしかなかった。
粘着質な水音が響く室内で何度も突き上げられる。

「はっ、」
「ぁあっ・・・ぁああっ!」
月光の体が震える。
ひくひくと啼く肉壁が月光の白濁を余すところなく受け止める。
そろり、目を開けた白蛇の目に月光が映る。

鍛え上げられた無駄のない上半身と端整な顔をベッドまで延びた月の光が映し出す妖艶な光景は圧巻されるほど美しかった。


『意趣返し』


タイトルそのまま。
悪戯しようとしたら白蛇が喰われちゃうだけのお話。
この二人でやっと裏かけました。
本当は初夜みたいなのかいてたんですがあまりにも白蛇がかわいそうなのでぼつになりました。
個人的には気に入っていたので気が向けばあげちゃいそうですが。
終われば。


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