story
1話
心地よい風が吹いていたのが急にやんだ。どうやら着いたみたいだ。
車から降り、深呼吸を二三回して、背伸びをした。
視線を上げていくと…
「ここが…私の通う高校?」
「''栄開(えいかい)高校''へようこそ」
「へぇぇ。…結構大きいんですね」
「そうでしょう?」
「はい。
…失礼ながら、寮は何処でしょうか?荷物が重くて…」
「私ったら…ごめんなさい。今案内するわ」
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「見た目も凄いし広いし…疲れた」
「私も少し疲れたわ〜。歳かしら」
「まだまだいけますよーっ!」
「そー?ありがと」
私は少しぼーっとしながらこの先のことを考えていた。
もし、ここの高校に来たとして、この高校には自分の知り合いや、長い間一緒にいた親友すらいないのだ。
そんな中、自分はどのように過ごせばいいのだろうか。果たして友達と呼ぶことのできる人と巡り会えるのだろうか。そんなことをもんもんと考えているうちに、視線を感じた。
「どうかしたの?」
「あぁっごめんなさい。少し考え事をしていて…」
「どんな事?」
本当に言いたかったことは少し恥ずかしくて言えなかったので、私はすこし違った質問をした。
「…こんなに広いじゃないですか、だから道とか自分の部屋を覚えられないんじゃないかと…」
「心配しなくても大丈夫よ。ここに住み始めた人はみんなそう言っていたけど、1週間2週間位したらみんな慣れたわよ〜?」
「…そうですか。」
私絶対そんな短期間で覚えられないよー…うぅ。
「他に聞きたいことはあるかしら?」
「…ありません」
「そう。
…あと、貴方部屋は少し大き目の方がいい?」
「…出来れば」
「じゃあ。部屋は三階の309号室ね。はい、鍵。」
「あ、はい。」
「そういえば部屋は相部屋だから。」
「相部屋?」
「そうよ。だれが相部屋かは会ってからのお楽しみよ〜」
「はぁ…」
怖い人じゃなければいいなぁ。
「あと、入学まではまだ2週間位あるから、その間で馴染めばいいわ。」
「はい。」
そっか…私あと2週間したらここの高校に毎日通うのか…
「あ…あのっ!」
「なぁに?」
「相部屋の人はどんな人なんでしょうかっ?」
「そんなに知りたい?」
私は無言でうなづく。
「んー。いい人よ?」
「本当ですか?」
「えぇ。」
「でも…でも、なにか…あ!写真とかないんですか?」
「疑り深いわねー。大丈夫。その内慣れるわよ?…っと。ごめんなさい。そろそろ私戻らなきゃ。きちんと荷物を整理して綺麗にしとくのよー?じゃあねっ!」
「解りました…」
と、姿が視界から外れるまで見届けた後、さっきもらった合鍵を手にして、鍵を開けた。
「…やるか。」
と呟きながら荷物を少しづつ崩し始めた。
___バタン
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「こんなもんでいいかぁ。」
大体のものは整理し終わったので、ふぅっと息を吐いた。
「なんか…眠いなぁ… 相部屋の子ってどんな人なんだろ…」
どんどん視界が遠ざかって行く感覚に心地よくなり意識を飛ばした。
[*前]
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