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圧*数富


「数馬……もうちょい右…」
「ここら辺?」
「ぃ……っ!」

ぐりぐりと肩の凝りを解すように刺激すれば、作兵衛は痛いと言いながら悶える。
風呂に入った後で部屋に訪ねてきた数馬に理由もわからないまま俯せの体勢にされた作兵衛は、何故か指圧の実験台にされていた。

「作兵衛、やっぱり凝ってるね」
「あー……」
「こことか、」
「っ……ぃ…てぇ!」

肩の懲り固まった部分を押される痛みを、ぐっと拳を握って耐えてから、はぁっと短く息を吐く。
背中にまで下がった手が背骨を中心とするように、一定の感覚を空けて押される度に作兵衛は息を詰めながら、ゆっくりと目を閉じた。

「そこ、気持ち良い…」
「……何かエロいよ作兵衛」
「………馬鹿じゃねぇの…?」

悩ましげに眉を寄せる作兵衛を見て思った事を口に出せば、悪態と同時に挙げた足で背中を蹴られた。
その足を掴んで、そのまま足底を両手で挟むようにして押さえる。

「そういう酷い事言うと……」
「おい、何して………っ」
「こうしてやる」

嫌な予感がしたのか、手の力を使って逃げようとする作兵衛の足をしっかり掴み、記憶にあるツボの位置を狙ってぐっと指圧した。
直後、ぎゃあぁと作兵衛の口から断末魔のような悲鳴が漏れて、数馬はにっこりと笑顔を浮かべる。

「ここが痛いと胃が悪いんだって」
「ぁ………っ知るか!一回手を離せ痛い痛い痛い痛い痛い!!」
「そぉれ」
「ぎゃあぁぁあぁああ!」

上半身だけごろごろと左右に転がり回る作兵衛を十分見てから、ぱっと手を離せば痛みに顔を歪めた作兵衛が、ばたりと畳の上に沈む。

「もう片足いく?」
「………勘弁してくれ…」

逆の足に軽く触れれば、びくりと跳ねた足がずるずると這うようにして逃げる。
もう終わりだよと軽く背中を撫でれば、身体を起こした作兵衛が胡坐をかいてから腕を回した。

「どうだった?」
「すげぇ良かった……後半以外」

恨めしそうに睨んでくる作兵衛から視線を逸らして、身体が軽くなったと呟く作兵衛に数馬は緩く微笑む。

「…しかし何でいきなり指圧だったんだよ?」
「伊作先輩に、ツボの本をお借りしたんだ」

人体に興味が湧いて、丁度作兵衛がいたからという理由を話す数馬に、俺は実験台かと作兵衛は厭きれたように笑った。

「あとは、」
「………何だよ?」
「いつも動き回ってる作兵衛に、お疲れ様の気持ちを込めてみました」
「…………おぉ…?」

いきなりの発言に困惑して眉を下げれば、口元で両手を合わせた数馬がふふっと笑いながらゆっくりと首を傾げる。

「いつもお疲れ様」
「………ありがとうな」

落とし穴に落ちた数馬を助けたことを指すのか、藤内が壊した学園内の修補を指すのか、はたまた迷子と虫捜索を指すのか、思い当たる節が多すぎる事に片手で顔を抑えた作兵衛は、何とかそれだけを呟いて返したのだった。








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