[携帯モード] [URL送信]

私達は立つ!
20160801 はちがつついたち。のきせき。

匹野幸は、人間として、甦り生きていくことが決まった。その時に出会った当代の選ばれし子どもたちが、喜んでくれたのは記憶に新しく、帰れる場所もない私は、デジタルワールドで生きていくことを決めて、しばらく。涼しいエリアをカイモンをつれてふらりと散歩をしているときに、昔に体験したような感覚に襲われた。
体が痛くもないのにバラバラになるような、浮いているような、どことなくふらついているような。熱が出て体調を崩しているような気持ち悪さに覆われる。
カイモンが私を呼んでいるから、大丈夫だよ。と声をかけようとして顔をあげれば、ふらりと体が傾いた瞬間、世界が一瞬にして、変わった。
涼しい場所が、一気に熱くなった。夏の臭いに、目まぐるしく動く人と、時間にそぐわない鳥の囀り、そして交差点の中心にいる私たち。
懐かしくもう見れないと思った世界が、そこにある。

「幸?大丈夫?」
「とりあえず、移動しよう。」

人間世界に来ちゃったみたいだけど、落ちついて考えなきゃ。私もよくわからないや。

横断歩道を渡り終えて、近くにあったベンチに腰かけて、カイモンを抱き締めて囁くように投げ掛ける。

「カイモン。どうしよっか。」
「どうするって、どうする?」
「…わかんない。」

見てる限り私の知らないものばかりで溢れてる世界。人は四角い薄い板を見つめて歩いてる人や、親子で歩いてる人達もたまに、板を見つめてる。私の知らない世界。つい先日京さんに用事があったから、向こうにわたったけれど、また違うように困惑する。

「また、知らない場所に来たんだもの。わからないよ。」
「幸には、僕がいるよ!」
「そうだね、カイモン。」

大丈夫。だよ。と弱く呟きながら、カイモンの頭を撫でて流れる人びとを眺めると、だんだん寂しくなってデジタルワールドの友達を思い浮かべて、心配してるかな?とか、思い始めたら心の隅に影が宿る。視界がちょっと滲み始めたとき、視界に人が見えた。よく見ていた友達に似た顔立ちの少年に、驚いた。

「あの。大丈夫ですか?」
「…た、たかいし、くん…。」

どきりと心が跳ねる。私の知る高石くんは、小学生で私よりも小さい子どもだった?。…はて、そもそも、高石くんって、誰だっけ?友達って私に、居たかな?
思い出せないもやもやが、胸をじりじり焦がしていく。なにだっけ?私は?なにで?たかいしくんを知ってるの?、誰?たかいしくんって?

「え…?」
「ごめんなさいね。気のせいね。行こっか、カイモン。」
「あの。良かったら話をしませんか?」
「ううん。大丈夫。ちょっと、なんだかよくわからないけど、思い出せないの。気にしないで。人違いよね。」

カイモンをだいて逃げるように走り出そうと目の前の彼の脇を避けるように走り出せば、ねぇ!と呼び止められたので、そちらを向く。

「僕たち、どこかで会いましたか?」
「…私も、よく解らないんだ。ごめんなさいね。」

曖昧に微笑んでやり過ごそうとしたのだが、すんすんとカイモンが鼻をならして、主張を始めた。

「幸、タケルだよ!タケル!この臭いはタケルの臭いだよ!」
「…タケル?タケルって…誰カイモン?」
「タケルって…タケルって…誰だっけ?」
「解んないね。とりあえず帰り道探そっか。」

じゃあ。とお辞儀をし、去ろうとしたら背後から「あの!」と声が聞こえて、驚いて足を止める。ゆっくりと振り向けば、彼は何か言いたげにこちらを見ていた。

「僕、高石岳です。たぶん、あなたの、いう高石くんだと思います。」
「…でもね。正直、よく解らないんだ。どうして、その名前を呼んだ理由も解らなくてね。」

何でだろうね?さっきいった高石くんのこと、何一つ解らないのに、どうしてこんなにも懐かしさを覚えてるのだろうか。

「あの…僕が時間を潰したくて…もし、良かったら、少しお話しませんか?」
「カイモン、大人しくしててくれる?」
「ちょっと先に公園があるから、そこに行きませんか?ぼくのパタモンも出したくてね」

彼の鞄からオレンジと白の翼をもったデジモンがぴょこりと顔を出したのだった。デジモンだと、わかったから、ちょっと安心して涙が出そうだった。

はちがつついたち。のきせき。
2002年のタイムトリップ主がまたデジトラまでトリップ。
データのなんやらかんやらでデジタルワールドから現実世界に転送されて、弊害なのか、パラレルのなんやかんやで記憶が欠落。
そんな、夢主。


[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!