短編。
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光姉。
「遅い。」
小さなアパートの一室。炎山はイライラしながら、部屋の中を右往左往している。
聖なる夜にも関わらず、彼女も炎山も今日は仕事。
だが、炎山は早く切り上げて飛行機を飛ばし、急遽アメロッパに来た。のにも、関わらず部屋はシンプルにまとめられ、季節感すら味わえない質素な部屋のまま。
クリスマスツリーも、クリスマスプレゼントも無い。唯一、クリスマスらしいのは、机の上のホールケーキと伝票、来るのを見越して作った七面鳥とクリスマスらしい料理。
「アイツは。こんな日もか。」
荒々しく引いた椅子に身を投げて、炎山がぼやく。
振り替えれば、一年は早いものだ。ネビュラグレイやら、様々な事がまるで矢のように過ぎて言った。
光隠、矢のごとし。
そんな感覚で物事が、駆け抜ける。とても、速い気もするが、事実上。一年。365日だけ。
「ただいま。炎山。」
ガチャリと開いた、玄関に目を向けると、彼女がダルそうにブーツを脱いで、中に入るや否や目を白黒させて。
「……本当に居たの。」
と言った。炎山は居るから、言ったのだと思っていた。が、実際は意外にも、日常と化して言っているらしい。
「早く、着替えて来たらどうだ?。」
「あ―そうね。でも、ご飯を温めてから。」
コートを脱いで、そのまま机の上の料理を、拐うとそのままレンジに入れる。
「寒かっただろ。」
「ううん。炎山を見たから元気になった。」
適当にボタンを押すと、鈍い音をたて動きだす。それを確認して、モゾモゾとセーターを被る。
「炎山は、仕事を切り上げたんだ。」
「仕事を仕上げたんだな?」
「えぇ、サンタの姿をしてケーキをね。」
その言葉に、炎山は飲みかけの冷えたコーヒーを吹き出した。しまったという表情で、慌てて卓上を片付ける。
「構わないわよ。また今度、買い換えるわ」
「すまない」
着替を済ませて、レンジの中から、適当に取り出して炎山の前に並べる。
「食べないのか?」
「向こうでケーキ沢山食べちゃったし。」
ごめんね。ナイフとフォークを手渡して、炎山の向かいに座り緩やかに微笑む。
時計は既に、日付を跨ぎ26日。
誰よりも遅いクリスマスが。
「……甘い」
「それ、飴細工。」
「まともな料理は無いのか?」
「無いわね」
そして、今日とて変わりない夫婦漫才のベルが叩かれる。
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