短編。 20150610 光兄弟誕生日。 「姉ちゃん、どこ行くの」 「彩斗のとこ。いつも見てるけど、たまには顔出さなきゃねぇ。」 「俺も一緒に行くよ」 「好きにしなさいよ」 20150610 光兄弟誕生日。 バスにのってしばらく。流れる景色の中で、 はぼんやり過去を思い出した。 「昔は嫌いだったのよね」 「え?なに?」 「何でもない」 弟が小さいから。 彩斗の体が弱いから。 生まれてすぐの彼らが嫌いだった。 はお姉さんだから。 なんてずっと。 母さんも父さんも熱斗と彩斗にかかりきりで。おじいちゃんのところにたまに預けられたりしてたから、学術書は身近な存在で友達だった。母に愛されず父に愛されず、弟達が全てを奪っていく感覚があった、だから思っても言えない言葉ばかりが、ずっとそこにあった。くすぶって喉に張り付いて息を潜めていたのはよく覚えてる。たまにふっと湧いてわたしを揺らす。 わたしなんて。と考え出したらきりがなくて。だから私は、あの手を取ったのだったと。遠い過去が存在した。欲しくなかった力は、有る意味亡くなった弟にちかくなっていくのがよく自分でも感じた。 「姉ちゃん、降りるよ!」 「きちんとロックマンはいる?」 問いかければ、そこにホログラムが浮いて、そこに姿を表した。 はふっと笑って弟とバスを降りる。バス停近くの売店で必要そうな物を買って袋を受け取ろうとしたら、俺が持つよ。と熱斗が袋を奪い、空いた手を繋ぐ。 そこでふっと亡くなった弟の顔が重なって見えた。出かけた言葉が息になって、ハッとする。キラキラした瞳が、こちらを見ている。亡くなった弟の発作の後の記憶が蘇って、その瞳の色が胸を苦しめる。 「…姉ちゃん?なんかあった?」 「なんでもないわ。昔を思い出したの。もう帰れない そういえば、熱斗。アンタ、彩斗だけ彩斗兄さんで。私は姉ちゃん。なのよ。 「なに?姉のありがたみが分からない?」 「いや、よく姉ちゃんには助けられてるから、フレンドリーにさ!」 「キャノン喰らわせるわよ。ロックマンに」 「横暴だ!」 ギャンギャン喚きながら、二人で坂を登り始める。きっとこんな日ももう二度もないのだろうと思い、彼女は小さく呟いた。 さよならだけが僕らの愛だ。 |