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★MAIN★
大丈夫A
しばらくそのまま日はたち、あの夢を見出してから1ヶ月になろうとしていた。







「昼休みー!弁当♪」

「おー」

田島君も泉君も浜ちゃんも弁当を広げて、食べ始める。

みんなおいしそうに食べてるな〜…

俺も…頑張って食べよっかな…。





一口、食べた瞬間。


凄まじい吐き気におそわれて、俺はすぐ教室をでた。

田島君も泉君も俺を呼んでたけど、無視…しちゃった。







すぐトイレに入った。










気持ち悪い…
こんなに気持ち悪くなるのは久しぶりだ。
中学時代…少しあったけど。

でも今よりましだった。

…やっぱり…










俺はまた、中学時代の再来になるのが…怖くて怖くて仕方ないんだ。









「三橋ー?いるのかー?」

泉君、だ。
やばい…気づかれる…


個室に入ってたからなんとかばれなかったけど、結構どきどきした。


と思ってたら、急に激しい頭痛がした。
俺はしゃがみこみながら軽く泣いた。痛いし、気持ち悪いし…












チャイムが鳴り響いて、俺はよろよろと立ち上がって痛む頭をおさえながら教室へ戻った。












授業前に、田島君と泉君と浜ちゃんにどーしたんだ、って聞かれたけど、阿部君に呼ばれてたの忘れてたんだ…とだけいっておいた。
すぐばれるよーな嘘かもしれないけど、これしか思いつかなかった。


その間も、治らない頭痛に悩まれながら…俺は部活へいった。










三橋が最近変だ。

なんか妙にボーっとしてるし、
ときどき悲しそうな顔を見せるんだ。

俺がいうから間違いないんだ!ゲンミツに。
なのにみんな、そうか?っつって軽くスルーしちまうんだ。

なんなんだよ。
みんな三橋が心配じゃねーのか!?
エースだぞ!?
部員だぞ!?
仲間だぞ!?
友達…だろ……?

みんな三橋は嘘つけない、って思ってる。きっと、俺が思うにそんなことはない。
三橋だって嘘はつくし、よっぽど気づかれたくないなら、それなりに隠し通す。
はずだ。だって、三橋は優しすぎるから。


みんなに心配かけたくない、って…
きっと、すごく思ってる。



三橋……。
仲間だろ?友達だろ?

気軽にいえよ…












「三橋、投球練習」

「ぅ、うん…」

投げたい。でも…
怖いんだ…。

阿部君の…右手が。








ーバンッー

「ナイピッ!」

阿部君が後ろにいる監督に呼ばれ、後ろをむく。う、わ…

酷いめまいだ…。



俺はふらふらしながら膝に手をつく。

頭痛が酷い。気持ち悪い…

俺はすっごく絶不調だった。



更にめまいまでして、俺はついに倒れた。












ードサッー

後ろから聞こえた音に振り向けば、最悪な光景が目にうつった。


「三橋!!」


俺は思わず少し叫んで、三橋の肩を揺らした。こ、いつ…

なんか軽くないか…?

…そんなことよりっ!




俺は三橋をおぶって、とりあえずベンチに座らせた。

篠岡もシガポもモモカンも、みんなで三橋の様子を伺う。



「顔色…悪くないっすか?」

「…ええ。熱中症や日射病ではなさそうね。先生…分かりますか?」

「今のところは分かりません、ね。私と篠岡で見ておきますから…監督は練習に戻ってください。あと、阿部も。沖と花井と投球練習」

「ええ、分かりました」

「…はい」

こいつ…この頃妙にオドオドしすぎてた。投球練習のときはとくに。

投げてるときはやっぱり普通だけど、俺がサインを出す前は、目が泳いで…手が震えてた。

どうしたんだ…三橋…


「阿部、どうしたんだ?」

「花井か…。三橋が…倒れた」

「倒れた…!?監督、大丈夫なんですか!?」

「…分からない。先生…やはり病院へ連れてった方がいいんじゃ…」

「…」







シガポの沈黙で、俺はだんだん実感がわいてきた。
三橋が、倒れた。

倒れたんだ…。

「先生!病院へ行きましょう!」

俺は思わず叫ぶ。花井が、俺の肩をもって少し俺をおさえた。

「そうだね…。じゃあみんなはすぐ練習に戻りなさい。僕だけで行くから」

「先生、お願いします」

シガポは三橋をお姫様だっこして、俺の方を見た。…なんだ?

「三橋…何キロ?」

「え……多分52キロ前後だと思いますけど」

「…そっか」

三橋…軽くなったか?
いやでも…50キロ代はある。
うん、絶対。

「阿部…三橋50ないよ、多分」

「…嘘、だ…」

「49…下手したら47くらいまで下がってるかもしれない…」

47キロ…!?
あの食い意地だけははってるあの三橋が……本当に…

どうしたんだ?





ー三橋最近変じゃね…?ー

田島がいってた言葉を思い出す。
あのときから三橋は変だったのか!?

多分…2週間は前だ。

そのころから…いや、下手したらもっと前からか。
最近、だから…それより何ヶ月も前ってことはないだろうけど。














心配で、少しボーっとしてたら、

「そういえば、前も三橋…すごくボーっとしてました。多分…3週間ぐらい前」

「そうなのか?」

「ああ…。朝練早くきたときあってな…。グラ整してるときすごくボーっとしてたから…」

「…」

あいつ…
何があったんだ…?


「阿部!」

「田島…泉…」

「三橋どーしたの!?」

田島のすっげー心配そうな顔に、少し心が痛んだ気がした。



気づけなかった、自分にいらつく…



「倒れたんだと…」

「「倒れた!?」」

俺のかわりに花井が答えた。
田島と泉は同時に叫んで、顔を見合わす。

「阿部…お前昼休み三橋と会ってたんだろ!?なんかそういうこと話してたんじゃねーのかよ!」

…は?

俺と花井は訳が分からない、という顔で田島を見る。
当たり前だ。
俺はずっと昼休みは花井と水谷と一緒にいて、三橋とは全然会ってないんだから。


「…俺、三橋と会ってねーけど…」

「…は!?でも三橋は阿部に呼ばれたからいった…って…いったよな?」

「いったよ!ゲンミツに!……三橋…嘘ついたのか…?」

…あの三橋が…
嘘を?



俺達4人は訳が分からないという顔で固まっていた。















「……ん…」

目が覚めたら、見えたのは白い天井。
…ここ、どこだ?

「三橋…大丈夫?」

声のする方を見たら、そこには先生がいた…なんで?

「先、生?」

「うん。三橋…部活中に倒れたんだよ。わかる?ここは病院」

…そういえば…。
そんなことないような気もしない。
あれ…?

あ、そっか…俺めまいと頭痛と吐き気で気持ち悪くて…。


「あ、あの…す、いま、せん…」

「いいんだよ。それより具合はどう?」

「平気、です!」

あんまり平気じゃないけどそういった。本当は、すごく頭痛がするし、目がちかちかするし…


「廉!」

「お母さん…」

「大丈夫?具合は?どこか痛いの?」

俺は心配かけたくなくて、明るくいった。

「大丈夫、だよ!」














そのあとお母さんはすごくしぶったけど、なんとか仕事に戻ってくれた。

お母さんにまで心配されるなんて、俺もダメだな…。

もっとしっかりしなきゃ…



大丈夫…中学のときだってずーっと1人で耐えてきたんだ。
これしきのことで、みんなに迷惑なんかかけてられないんだ。

嫌われてないかもしれない、今を…

大切にしたいから。










ーガラッー

「三橋さーん。大丈夫ですか?」

看護婦さんが部屋にくる。
あ、れ…先生いつのまに呼んだんだろ?


「あ、はい…」

「そう…。今先生がいらっしゃるから、もう少し待っててねー」









しばらくして、お医者さんに診てもらったら、緊張型頭痛と偏頭痛が同時にきて、軽く喘息にもなりかけてたんだって…。
だから、薬を飲んでもしばらく頭痛は続く可能性があるから、しばらく通院してください、っていわれた。









俺は病院からでて、先生に送ってもらって家へ帰った。
荷物は先生がもってきてくれたらしい。なんか悪いな…

「三橋、お大事に」

「あ、ありがとう、ござい…ます!」

「どういたしまして」

先生の笑顔に俺も一緒に笑顔になる。
そして先生は、荷物を俺に渡して、車をすすめた。



一息つくけど、1人になると不安になる。またあの夢が鮮明に蘇った。




ーひいきなんだよ!ー
ーお前はエースじゃない!ー
ーその一番を叶にわたせー
ーお前のせいで野球にならなかったー





修、ちゃん…







俺はまたあのときと同じの、頭痛と吐き気、めまい…更に息が苦しくなる。

「…っ…!…はあ、はあ…はあ…!」


苦しい…苦しい…








ーその一番を…






沖にわたせ!

花井にわたせ!ー






嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…!







怖い、怖い、怖い…









「ゲホッ…っ…!」


俺はトイレに駆け込んだあと、袋を口につけて息を整えた。












しばらくそれの繰り返しをしてると、家のチャイムがなった。

う…今はでる気分じゃ…

すると、チャイムが何回も連続でなる。
なんか…前にもこんなことが…




あ!…た、田島君、だ!


すると携帯が鳴って、画面を見ると阿部君からの着信。




球技大会のときと…
あのときと同じだ…!

俺は嬉しくて、

ちょっと泣けたけど、すぐ阿部君の電話にでた。

「も、もしもし…」

「三橋!?今どこだ…!?」

「ごめっ…い、今…家だよ。ちょっ、ちょっとまってて!」


俺は軽く走って、階段を降りて玄関へ行った。ドアを開けると、そこにはみんながいた。

「み、んな…!」

「三橋ー!!大丈夫か!?ゲンミツに!」

田島君が俺に抱きつく。
嬉しくて、嬉しくて…俺は田島君を抱きしめかえしながら笑顔になる。

う、ひっ…!

みんな…良い人だ!



「みんな、きてくれて…あり、がと!」

「当たり前だろー!俺達三橋の友達だもん!ゲンミツに」

友、達…?
田島君は本当に友達って思ってくれてた…すっごく嬉しくて、嬉しくて…
少し泣く。


「うわっ!俺なんかした!?」

「な、にも…してない、…っ…よ!」

嬉しくて涙がでたなんていったら…うざがられるに決まってる。
嫌だ…それだけは嫌なんだ。

うざがられたくない。

だから俺は必死で涙をこらえて、みんなを家にいれた。


せっかく来てくれたんだ。
ちゃんと…しなきゃいけない。



俺はふらふら少ししたけど、なんとかジュースやお菓子だけは持ってこれた。

阿部君に…怒られたけど…。



みんなでのんびりしてるときに、花井君が口をひらいた。


「で三橋…どうだった?」

「……」

俺はジュースを飲む手を止める。
言うの…なんか怖いな…。

あっそ…とか。
ふーん…とか
なんだそれだけか…とか

そういう反応されるかもしれない…。
怖い…ちょっと緊張……




すると、また吐き気と頭痛がして、俺は素早く立ち上がってトイレに駆け込んだ。



もう何回ももどしたのに…
少し胃におさめるだけで、すぐこーなっちゃうんだ…。

情けない…
痛い…
気持ち悪い…



軽くうがいをしてから、俺はみんなのいるところに戻ると、すぐ栄口君が抱きしめてくれた。

なんでか、よく…
よくわかんないけど…
嬉しかった。

「三橋…俺達すっごく心配なんだよ…。なんで?どうしたの…?」

「…栄口、君…」






栄口君の…みんなの心配そうな表情に、俺は少し泣いた。









泣き止んだあと、俺は頑張って口をひらいた。みんなに…話さなきゃ。


「えっと、ね……その…病名、みた、いなの…は…。…偏頭痛、と…緊張、型…頭痛…と、少し……喘息、だっ、て」


「…緊張型頭痛?」

田島君が聞き返す。

「えっと…極度の、緊張で…なんか…頭痛…おこす…の、かな?」

「へー…よかったー…俺癌とかもーっと恐ろしい病気なのかと思ったー!!ゲンミツに」

「おま…っ、オーバーだな…」

「でも田島、偏頭痛ってひどいとつらいんだよ〜。激しい頭痛と、嘔吐が続くんだって」

「それは辛い!ゲンミツに!…てか…それを三橋は3週間以上も耐えてたのか!?」


3週間…かな?
もうちょっと…長かったと思う、けどー…

「どれくらい続いた?」

「…1ヶ月、か…な?」


「「「1ヶ月!?」」」



みんなの叫び声に、俺はビクッとなる。
栄口君が俺をなだめてくれたから、頭痛はした…いやしてるけど、吐き気はしなかった。


「なんでそんなにも黙ってたんだ?」

泉君が優しく聞いてくれたから、俺は安心しながら答えた。


「えと……平気、だと…思った、から…」

怒られると思ってドキドキした。

う……また頭痛だ…。

…やっぱ緊張すると頭が痛くなっちゃうんだな。そんなの…
いつも結構緊張してるはず、なのに…


…そっか。
すっごくいきなりの強い緊張がだめな…のかな?…阿部君がサインを出す前はすごく緊張して、心臓が破裂しそうだった。



じゃあ中学時代…は…



誰かと関わることがなかったから…。
緊張しなかった。
ただ、寂しくて…悔しかった。

マウンド譲りたくない。

その気持ちが最前線にでて、3年間…マウンド譲らなかったんだ。




緊張も何も…










「三橋…?」

「は、は…はい…」

阿部君が俺を呼ぶ。
怖い…怖い…

嫌われたくない。
俺を投手として認めてくれてる…
阿部君に…嫌われたくない。



















あとがき

…思ったより長くなっちゃったから一旦きりまーす(^ω^)

なげえ。


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あきゅろす。
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