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◆落つる花びらに口付けを・9
「……っ」

服の裾から布地を分けて入ってきた手のひらが脇腹を撫でていくと思わず身体に力が入る。緊張を解くように額から目尻、頬へと下りてくる唇に小さく息を吐いて、きゅっと両手でシーツを握った。

「あ…っ、ふ」

しばらく宥めるように腹部を撫でていた指が胸の突起に触れ小さく身体が跳ねる。まるで壊れ物を扱うような手付きでやわやわと愛撫されると少しずつ熱が高まっていく。

「ふぁ、ん…!な…んか、変な…感じ…っ」

「…まぁ、今までと違うしな」

そう言うと手を止めてキスをもらった。侵入してきたそれに舌を絡めとられ、口の内側を掠められるとぞくりとした感覚が這う。何度も繰り返すうちに流石に息苦しくなって相手の服を掴むと口唇が離れ、代わりに伸びてきた腕が深緑の髪を撫ですいてきた。撫でられるのは好きだ。相手の首に腕を絡めてぎゅっと抱き付いた。

「…っひぁ、あっ」

「……もう濡れてるな」

いつの間にか下半身へと伸びていた手が入り口をつうっとなぞってきて、思わず身体が跳ねる。くちゅくちゅと指で弄り回されると嫌でも腰が震えて流れる液体の量を増やした。

「や、んぁっ…ひぁ、あ、ふっ……ぁん、あっ」

初めての感覚に目眩がしそうになる。だが思考とは裏腹に身体は指だけでは物足りなくなっていて、焦れったさに足と足を擦り合わせた。と、次に走った刺激に本当に視界がちらついた。

「ひっ!?あぁ、あ、あ、ひぁっ、そ、んなしちゃだめぇ…!」

入り口の突起を指で摘ままれ、ぐりぐりと擦り合わされてびくびく身体が震える。腕に入れた力を強めてきつく抱き付くと、指にぐっと力が籠って擦り合わされていた突起を押し潰された。

「ひぅ、あ!?ひ、やあぁっ…」

大きく身体が震えてとぷっと液体が溢れ出ると同時に一気に身体の力が抜けて、回していた腕がずるずると下りて再びシーツへと沈んだ。随分と速い鼓動を宥めようと荒い呼吸を繰り返しているうちに、とろとろと液体が太股を伝う感覚が伝わってきて恥ずかしさに顔を在らぬ方へと逸らすと、ぺりっと何かを破くような音がしてそちらの方に目を向けた。

「……それ…付けるん…です、かー…?」

「あ?…あぁ、ガキが出来たら大変だろ」

そう言って顔を覗き込むと、フランの物言いたげな表情に気付いたらしくどうした、と汗で貼り付いた髪を避けてくれた。

「ミーは…」

未だに言おうか言うまいか躊躇っている。どんな顔をされるだろうか、いつも考えることは同じだ。相手の反応が気になってなかなか言い出せない。

「…ミー、は…」

でも、今まで何度フランが躊躇っていたことを口にしても、恐れていたようなことを言われたことは一度も無い。
手を伸ばして相手の服をきゅっと掴んだ。

「……た、隊長、の子供だったら…欲しい、です」

一瞬目を瞠ったようだった。しばらくフランの顔を眺めた後、少し躊躇うようにそっと手を伸ばしてきて頬から顎のラインをなぞられた。

「…つらいのはお前だぞ、いいのか」

じっと見つめられて少しだけ気持ちが萎縮したけれど、こくっと頷いてみせた。逸らされない視線に心拍数が上がる。
しばらくそうしていると頬に添えられていた手が動いて、深緑の瞳が僅かな微笑みを捉えた。

「……そうか」

そのまま顎を持ち上げられ深い深いキス。少し苦しくて視界が滲んだけれど、必死に舌を絡め返して再度相手の首に腕を回す。

「力抜いとけよ」

「ん、……いっ…!」

口唇が離れると同時にぴりっとした痛みを感じて思わず身体が強張った。フランに合わせてすぐに動きは止まって、背中に腕が回され覗き込んでくる表情は少し心配げだ。

「…やっぱ痛ぇか?」

「はっ、ん…だい、じょ…ぶ…です、から」

「……無理だったら言えよ」

少しずつ侵入してくる熱をなんとか受け入れようと浅い呼吸を繰り返す。内壁を押し拡げられる程、少しの痛みと這い上がってくる快感がいっしょくたになり訳がわからなくなって、自然と涙が零れる。

「んぁ、はっ、ぁ…ひぁ、あっ」

「は…全部入ったぞ」

ぐっと中を突き上げられて、ぞくりとした感覚が這い回ると同時にびくんと腰が跳ね上がる。
必死に呼吸を宥めていると髪に指を絡められて、目尻に溜まった涙をキスで掬われた。
力を籠めてぎゅっとしがみつくと、背中に腕を回して応えてくれる。優しい手付きに何故だか泣きたくなった。

「……た、いちょ…」

「どうした?…なんで泣くんだよ」

「だって…だ、って…」

「だって、なんだぁ?ゆっくりでいい、言ってみろ」

「わかんな…っ」

涙腺が壊れたのだろうか、ぼろぼろと止まることなく涙が溢れてきた。なんで泣いているのかもよくわからない。いろいろなことが有り過ぎて、蓋をしてきた感情が一気に溢れ返ったのかもしれない。
喉の奥がひくついて上手く声が出ないから、代わりに相手の胸元に顔を埋めて一頻り泣いた。
傍にいて背中を撫でてくれる、誰かの温もりがこんなに有難いと思ったのはきっと初めてだ。
涙を流しきると少し平静を取り戻すことができたようで、ひくっと鳴る喉を宥めながら上目に相手を見上げた。

「落ち着いたか?」

「……少し…」

胸元に頭を寄せさせられて、ぽんぽんと往復する手のひらにほっと息を吐いた。しばらくフランの頭を撫で続けたかと思うと、不意に手を止めて小さく一言。

「…お前はなぁ、何でも一人で背負い過ぎなんだぁ」

「…え?」

「誰にも話さずに全部自分の中に溜め込んで、自分でも知らずに負担をかけてんだよ。感情がいまいち鈍いのもその防衛反応だろうが」

「…そう…ですかね」

そんなことを思ったことは一度も無い。いつの間にか今のようになっていて、それが当たり前だと思っていた。今までの世界を壊して、引っ張り出してくれたのはやっぱりこの人で。

「少しはオレを頼れよ」

「…はい」

「オレじゃなくても、ルッスーリアでもボスでもいい。他の奴等は…あんまり頼りにならねぇかもしれねぇが」

「……はい…」

また瞳が潤みそうになって慌てて目許を手で拭うと、泣き虫だなと小さく笑う声。そんなことないと反論したら額を軽く小突かれて少しだけ笑いが込み上げてきた。

「…ありがとう、ございます」

いつもそうやって守ってくれているのは命だけじゃないんだと、今やっと気付いた気がする。

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あきゅろす。
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