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人間嫌いの考察(スクベル・マモ視点)
「マーモンさ、最近あいつと仲いいよな」

ああ、また始まった。
読みかけの本から視線は外さぬままに、マーモンは不貞腐れたように口をへの字に曲げてこちらをじっと見るベルフェゴールへと向き直った。小さな体が分厚い本の重さに少しよろめく。

「心配しなくても君が懸念しているようなことは何も無いよ」

「本当に?」

「本当さ」

「…でもなー」

なんか嫌なんだよな、と小さく呟いた王子様はテーブルの上に篭ごと置いてあるドルチェへと手を伸ばした(というか赤ん坊の僕相手にそんなことがある訳が無い、とは考えつかないのかい?)。
怠惰を好み、またそれを司る悪魔ベルフェゴール。
詳しい由来は知らないが、その名には『人間嫌い』という意味があると聞いたことがある。
悪魔と同じ名を冠するこの王子様も人と関わるのを嫌がり(だから片割れとも仲が悪かったのだろうか)、好んで寄っていくのはザンザスくらいだと思っていた。だがいつからだろう、ザンザスの側にはあまり寄らなくなり気付けばいつもくっついて回っているのは銀の長髪と瞳を持つ同僚。
あれ程人になつかない王子様をどうやって手懐けたのか、端からずっと観察していたマーモンには不思議でならなかった。

「なんかいっつもスクアーロの肩に乗ってるし」

「それは任務の時でしょ。モスカがいないから仕方ないし、高さがちょうどいいんだよ」

居心地もいいし、とは嫉妬深い王子様の耳に入れるのは非常に危ないので言わないでおく(主にとばっちりを食らうのはスクアーロだしね、僕からの貴重な優しさだよ)。

「…あいつよく言い寄られてるし」

それはマーモンも知っている、恐らくヴァリアー内で最もそういった話に縁があるのはスクアーロだろう。
自分は赤ん坊だから論外だし、ザンザスは威圧的過ぎて謙遜される。レヴィやルッスーリアは自分とは違う意味で論外、ベルフェゴールはまだ子供だ(赤ん坊の自分が言えたことではないけれど)。
だがスクアーロは剣にしか興味が無いようなだし肝心な部分が非常に鈍いのだ、ベルフェゴールが心配しているようなことはまず無い。それにいい意味でまっすぐ、一途なのはベルフェゴールとてわかっているだろうに。
いや、もしかすると傍観している自分が一番把握しているのだろうか。

「…まあ、心配なら全く必要無いさ」

「……別に心配とかしてねーし」

全く素直じゃないんだから。マーモンが内心ため息をついたところで、談話室に新たな客が現れた。
本から顔を上げて確認すると、噂をすれば何とやら。

「やあスクアーロ、そこの不貞腐れた我が儘王子様をどうにかしてくれないかい?」

「あぁ?何かあったのか?」

「まあ八割方君が原因だね」

「納得出来ねぇぞぉ、いきなりなんだぁ」

「後はよろしく」

話は聞いてやったのだしベルフェゴールの気も済んだだろう、元々一人で本を読んでいたところにあの王子様が来て読書を妨害されていたところだったのだ。また一人になれる場所を探して本を閉じ抱えると、マーモンは開けっ放しの扉を出た。
扉を閉める間際にちらっと室内を覗くと拗ねたようにそっぽを向くベルフェゴールとそれを宥めているスクアーロ。
大変なことだと他人事に思って、マーモンは静かになった廊下を通り過ぎた。





fin.





常日頃から二人を観察しているマーモンから見たスクベル。
冷静に客観的な目で見ることが出来るマーモンだからわかることもあったりなかったり。
マーモンの方がお兄ちゃんみたいです←
ちなみにマーモンも普通の意味でスクは好き。

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あきゅろす。
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