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寝ぼけ眼にキスをした(スクフラ)
目の前に残る最後の紙切れにペンを走らせ、書類の山の頂上へと重ねる。
使い込んですっかりインクの減ったペンを書類の脇に置き軽く首を回すと、膝の上の柔らかな重みが小さく身動いだ。
起こしてしまったかと頭を撫でてみると、小さ過ぎて聞こえない寝言を溢しむにゃむにゃと口を動かして頭の向きを変えた。思わず笑みが溢れる。

フランがスクアーロの私室へとやって来たのはつい二時間程前だ。ちょうど膨大な量の書類を片付けていて、それを見た瞬間構ってもらえないと悟ったのか頬を僅かに膨らませむくれた顔をしたのを思い出す。
一度開けば毒ばかり吐く小さな口は今はすやすやと僅かな空気を取り込んでいて、呼吸する度小さな背中が上下する。いつもの大きく邪魔なカエル帽子は定位置に無く、柔らかで艶のある深緑の髪がさらさらと揺れていた。
癖の無い髪を指に絡め、指の腹で梳くように撫でれば擽ったそうに身を捩る。
何でも無いただそれだけの仕草に、愛しさ。

不意に聞こえた物音、ノックも無く扉を開けいつもの如く騒ぎながら入って来た大きな子供を、口許に人差し指を当て、しい、とたしなめた。
膝の上に居座る子供の姿を捉えれば、いつもはにんまりと弧を描く唇が急に機嫌を悪くして口端を下げる。それに苦笑して後でな、と頭を撫でてやるとむすっとした顔で絶対だぞと扉まで駆け戻って行く。
そいつキライだ、と去り際の捨て台詞にまた苦笑。



気だるい二時の昼下がり、ふと目を覚ました子供をあやすように頭を撫でて、おはようございます、と眠そうに口を動かす子供に、おそようの間違いだなぁと瞼に唇を押し付けた。





fin.





SSっていうかショート過ぎるけどSSと言い張ってみる。
短く見えるのは、気付いた人もいると思いますが一切台詞を入れていないからです(^^)
台詞を入れずに日常の気だるい昼下がりをだらだらと書いてみました。きっと天下の暗殺部隊にだってこんな一日があっていいはず。
しかし台詞無しは大変ですね…(´`)

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