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◇温度差±0(フラジル♀・学パロ)
初夏の候、まだ夏になりかけたばかりの時期だというのにじりじりと肌を焼く陽射しと教室に充満する熱気が憎い。
黒板の手前では暑さに耐え兼ねて長い銀髪を一つに束ねた担任が白いチョークの粉が黒板に残した数式を差して億劫そうに説明しているけど、既にオーバーヒート寸前の脳味噌には音としてしか入ってこなかった。
時計の針が刻む小さな音に耳を澄ませ早くクーラーの効いたカフェテラスに駆け込みたいと思いながら何の気無しに隣に視線を向けると、一つ年上の同級生がくたりと机に身を預け僅かに肩を揺らして呼吸していた。

「ジルさーん…流石に寝てたらスク先生にバレますよー」

ついでにブラウスの襟が開き過ぎてて胸の谷間が見えそうですー、なんて言おうものなら彼女の弟である先輩にそれはもう見事にボッコボコにされるからそっと胸の奥にしまっておく。

「…ジルさん?」

普段ならあーとかうーとか適当に返事が来るはずなのだけど、机に突っ伏したまま反応が無い。
まさかと思い少し失敬して前髪を払い除け額に触れてみると、ひんやりとしたフランの手とは対照的に火照る体温。
これは流石にやばい。

「スク先生、ジルさんが大変ですー」

「何ぃ?」

立ち上がり軽く手を上げて呼びかけると振り返った先生が近付いて来る。
先程のフランと同じようにくたりとしたままの彼女の首筋に手を伸ばして、その温度差に驚いたように手を引っ込めた。

「熱中症だなぁ、保健室連れてくから黒板に書いてること全部ノートに写しとけよ。フランは手伝えぇ」

「なんでミーなんですかー」

手伝うと言ってもフランの力では似たような背丈の彼女を運ぶのは難しい。フランの声には答えずに彼女の体に腕を回して軽々と抱き上げた先生は、ついて来いと保健室の方向を顎で差してみせた。
さっさと歩き出した先生の後ろをついて歩く。

「オレはすぐ授業に戻るから保健医の話はお前が聞いて後でオレに伝えろぉ」

「つまりパシり的な感じですかー」

「後でジュースでも奢ってやる」

「やったー」

両手が塞がっている先生の代わりにドアを開け中を覗いてみると、壁に「ちょっと出ています。具合悪い人は勝手に使っちゃってネ☆」と書かれたカードが吊るされていた。因みに裏を捲ってみると「マシマロでも食べてゆっくりして行ってネ♪」。

「白蘭先生はいないみたいですー」

「肝心な時に役に立たねぇなぁあいつは」

「あ、ちょっとどこ行くんですー?」

「授業に決まってんだろうがぁ、とにかく冷やしてあの馬鹿が戻るまで看てろぉ」

彼女をベッドに下ろすなりドアノブに手をかけ部屋を出ようとした先生を呼び止める、もフランに全てを任せてさっさと戻って行ってしまった。
あのーミーの分のノートは誰が録ってくれるんですかー?後でテスト範囲をプリントに詳しく鮮明に書いて貰おう。
などと思いつつクーラーの効いた涼しい保健室に避難出来たことは有難い、室温と相俟ってひんやりとしたシーツが心地好いのだろう、先程までほぼ意識の無かった彼女がベッドの上でもぞりと身動いだ。

「あ…気付きましたー?」

「……お前、フラン?」

前髪の隙間から覗いた緋い瞳が綺麗にフランの姿を映す。焦点はしっかり合っているようだからまず大丈夫だろう。
試しに再び額に触れてみると、まだ少し熱が残るものの先程の焼けるような熱は消えていた。

「とりあえず大丈夫っぽいですねー、冷たいもの持ってきますからちょっと待ってて下さいよー」

保健室には冷蔵庫が備え付けられている。本来ならそこには氷や保冷剤、薬がしまってあるのだけど、あの保健医に変わってからというもの冷蔵庫の面積の大半をアイスやらお菓子やらジュースやらが占領していた。
ついでにそれらもちゃっかり失敬してやろうと立ち上がる、がしかしつんと伸びた布に引っ張られそれを阻止されてしまった。フランを引き留めている服の袖に視線を徐々に移して行くと、裾を掴む細く白いたおやかな腕。なんですか、と口を開こうとしたところで強く袖を引かれベッドにダイブさせられそうになったので腕を着いて隣に俯せに倒れ込んだ。

「なんなんですかーいきなり…」

「お前の手、冷たくて気持ちいいな」

不意に取られた腕にぴたりと頬を寄せて、心地好さそうに擦り寄る。
一連の動きに完全に思考回路がスパークして、ただ呆然とされるがままに見つめるしか出来なかった。
徐々に思考が冷え始めた頃、良くも悪くも終了のチャイムが鳴り響く。

「あ、授業終わった」

すっかり元気になったのかチャイムが終わると同時に保健室を飛び出して行く彼女。
残されたのは自分と、伝染した体温だった。

(あれは誘ってると捉えていいんですかねー…?)





fin.





しばらく前暑さにやられそうになってた時に書いたフラジル♀。
学園のアイドル的な双子^^
思春期真っ盛りなフラン君(^p^)無防備な姿に悶々としてればいいよ
なんかもうあれだね!なんかけしからんね!←
ジルさまはスカートめっちゃ短いと思います。

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