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スターチスの花束を(スクベル)
「う゛お゛ぉいベル、またてめぇかぁ!」

「しししっ!」



今朝もまた我が儘で好奇心旺盛な王子様の悪戯に付き合わされる。
今日の悪戯は扉を押し開くと同時に落ちてきた金だらい、もちろんみすみす受けるという間抜けな真似はしなかったが動きの鈍いレヴィなら確実に当たっていただろう。昨日は床擦れ擦れに仕掛けられた紐に引っ掛かるとパイが飛んできた、当然自分は避けてパイの行く先はレヴィの顔面だ。一昨日はワイヤーを使ったナイフトラップだった(下手したら死ぬぞぉ…)。
日に日に酷くなる悪戯、一見ただの趣味の悪い遊びだがそれなら叱り付け止めさせるだけで簡単に済む。それができないのはあの子供がナイフやトラップの裏に隠した感情に薄々気付いているからだ。
構って欲しい、たった一言素直にそう言えばいいだろうに何故あの子供はそれができないのだろう。

「面倒なやつだよなぁ…」

久しぶりの休日、屋敷を出て適当に出た街の路地を歩きながらそうぼやく。
まあ、素直になれない子供とわかっていても敢えて触れない自分、周りから見ればどっちもどっちなのかもしれないが。
特に行く宛がある訳でもなくただなんとなく足を進めていると、ふと甘く優しい香りが鼻腔を擽った。首を捻って目線を変えれば、視界に広がる色とりどりの花弁。小さいが小綺麗な店だ、こんな立地条件の悪い場所でよく保っているものだと眺めていると人影に気付いたのか店の奥から一人の店員が出てきた。

「いらっしゃいませ、今日はどのような花をお求めですか?」

「あー…特に何ってはねぇな、たまたま目に入ったから見てただけだぁ」

適当に流して鮮やかに主張する花々を見回す。ふくよかな花弁を大きく咲かせたもの、小さな花弁をたくさん付けたもの、花ではなく鮮やかな赤い葉をしたものなど様々だ。赤、白、黄、ピンクなど明るい色の花を咲かせるものが多々ある中で、ふと薄紫色をした小さな花が目に留まった。
その花弁と似たような色をした瞳の子供が頭の中に思い浮かぶ。

「…その花、スターチスっていうんですよ」

視線が一ヶ所に留まったことに気付いたのだろう、先程の店員が花の手入れをしながらふっと微笑みを浮かべる。

「悪戯心っていう意味なんです。可愛い花でしょう?」

「…悪くはねぇな」

薄紫の悪戯心、にんまりと弧を描く唇と揺れる前髪の隙間から覗く瞳がますます色濃く映る。

「その花、如何です?」

「花束にして一つくれ」

「かしこまりました、ありがとうございます」

花屋にふらりと立ち寄って花を買う、まるで柄じゃないことをしている。だが先程聞いた言葉とあの子供がすっかり結び付き、頭に付いて離れない。きっとこれから、この花を見る度にあの子供を思い出すだろう。

「その花にはですね、もう一つ花言葉があるんです」

帰ったらまたケーキの一つもねだられるのだろうと物思いに耽っているうちに包装は終わったようで、綺麗に包まれた花束を店員が差し出してきた。なんだと聞き返しながら代金を渡すと、店員が楽しそうな笑みを浮かべる。

「もう一つの意味は、」



ありがとうございました、そう言って頭を下げる店員に適当に返事をして帰路に着く。
まだ日は落ちてはいないがだいぶ傾いている、きっと屋敷ではあの子供が不機嫌そうな顔で待っているはずだ。
屋敷の扉を開けて目に入ったのは案の定、口をへの字に曲げてむすっとした様子のベルフェゴールだった。

「今までどこ行ってたんだよ馬鹿鮫、王子放ったらかしてどっか行ってんなよ!」

「たまには一人の時間も悪くねぇだろぉ?」

「ヤダし、スクアーロいないとつまんない」

「はいはい、悪かったなぁ。これやるから機嫌直せ」

「…何これ?」

買ってきた花束を渡せば、想像していた通りベルフェゴールはきょとんとして見慣れない花を見つめている。

「スターチスだそうだ、お前にやるよ」

「プレゼント?」

「おぉ」

あの王子様のこと、花なんて興味無いとかドルチェの方がいいだとか我が儘を言い出すかと思ったが、意外なことに僅かに頬を染めてありがと、なんて小さく溢すものだから内心かなり驚いてしまった。

「…王子お腹空いた、何か作ってよ」

「わかった、わかった」

花が散ってしまっても、この子供にとって自分の存在が永遠に変わらなければいい。





fin.





リハビリで書いたつもりのスクベル…です。
それにしてもまだリハビリが足りないですね、文章がいまいち良くないというか…どうも調子が悪い。
とりあえずスクからのプレゼントに照れる王子は可愛いと思いました、まる←
ちなみにスターチスの花言葉は「悪戯心」、「永遠に変わらず」だそうです。
ベルの瞳は基本蒼にしてますが今回だけ花と同じ色で。

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