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聖なる夜なんて似合わないけど(スクフラ♀・クリスマス)
まだ挨拶したことは無いけれど、ボンゴレ九代目というのはとてもイベントを好むらしい。元々日陰の組織であり表に出ることを極力避けるヴァリアーはあまりこういったパーティーに参加することは無い。部隊としての性質からしても仕方ないけれど、まず誘いの手紙が山程舞い込んだところであのボスが乗るはずも無かった。
そのはずが…マフィア、しかも悪魔の名を関する者達が連なる独立暗殺部隊ヴァリアーに、クリスマス、だなんて。

「……みんな浮かれちゃってばかみたいですー」

けれどフランも、本当のことを言えば生まれて初めてのクリスマスパーティーというものに少なからず心は弾んでいた。だって、女の子なら誰でもこんな華やかなパーティーに憧れるんじゃないだろうか。
初めて着る淡いピンクのドレスと繊細な細工の施された髪飾り。フランをまるでお伽噺に出てくるお姫様のような格好にコーディネートしたのは普段よりも更にテンションの高かったルッスーリアと、彼が手配したファッション関係の人達だ。
こんな格好をしているせいか会場でも幾人かの男性に声をかけられたけど、適当な返事だけしてさっさとバルコニーに出てきてしまった。
まさか、パーティーがこんなに疲れるものだったなんて知るよしも無くて。

「もう疲れましたー…隊長も先輩もボスもどっか行きましたしー」

バルコニーの手摺に寄りかかって下に見える淡く降り積もった銀世界を眺める。持っていたカクテルは手摺に置いて時々振り返っては人混みの中に銀色を探すけれど、何度振り返っても見知った面影は無く、小さくため息をついたところで隣に長身の影が立った。
ちらりと盗み見てみると、先輩とは少し違った色合いの金の髪を片側だけ耳にかけ、楽しそうな顔でこちらを見下ろしている。身長はあの人と変わらないくらいだけど、手摺に手を着いているからか少しだけ小さく見えた。

「君、一人?」

「そうですけど…何かー?」

「いや、一人でいると危ないんじゃないかと思っただけだ」

「大丈夫ですー、そのうち来るのでー」

「なんだ、もう予約済みか…じゃあ彼が来るまでオレと一曲どう?」

随分とフレンドリーに話しかけてきた金髪の人は(ていうかこのレベルだと馴れ馴れしいですー)、にこにこと笑顔を振り撒きながらそう言って手を握ってきた。どう対処しようか悩みながらさりげなく手を払おうとした時、鼓膜を震わせたのは聞き慣れた不機嫌そうな低い声。

「てめぇ跳ね馬…何してやがる」

「あれ、スクアーロ?」

振り返れば立っていたのは、金髪の人が話しかけてくるまでにずっと捜していたあの人だった。金髪の人は知り合いなのか、銀を纏うその姿を認めると人懐っこい笑顔で隊長に手を振った。

「話はもう済んだのか?…いてててて!」

「まぁなぁ」

「ス、スクアーロ、いきなり何すんだよ」

隊長が金髪の人がフランの手を握っていた方の腕を引き剥がして思い切り捻ると、金髪の人は今にも泣きそうな情けない顔をして捻られた手首を擦った。
その様子が面白くて無遠慮に眺めていると、不意に腕を引かれて抱き寄せられ、見上げればいつもと違うスーツ姿のその人が普段の十倍も不機嫌そうな顔で金髪の人を睨んでいる。

「オレは何してたか聞いてんだが?」

「何ってそりゃ、ナンパ…」

そこまで言いかけて、金髪の人はフランとその隣に立つその人を見て、あ、と漸く気付いたように声を上げた。

「……いや悪い、全然そんなこと知らなくてさ」

「どの口がほざいてんだ、あぁ゛?」

「いや、だってまさかお前がこういう場所に自分の女連れてくるとか思わないしさ!」

両手を胸の前に持ってきて言い訳するように振っていたかと思うと、急にフランの方に向き直って「愛されてるな」と頭に手を置いてきて反応に困る。
それでも隊長が更に睨みを利かせると、そんなに怒るなよと冷や汗混じりに笑いながら会場へと戻っていった。

「そのうち馬刺にして肉屋に売り付けてやる…」

「だめですよー、お肉屋さんが困りますしきっと美味しくないですー」

少し酷いかもしれないけど、さっき会ったばかりのしかもナンパしてきた人に気を遣う必要も無いと思う。
くいと服の袖を引っ張ると渋々ながらも機嫌を直したようで、冷えるから戻るぞと手を引かれた。その時耳許に寄せられた唇が、まるで子供が悪戯を思い付いた時のような楽しげな表情を持って何かを紡ぐ。
目を見開いて見上げると、普段は滅多に見せないような楽しげな笑みを返された。

「Si,volentieri」

聖なる夜なんて似合わないけど、今日だけは染まってみてもいいかもしれない。





fin.





クリスマス仕様のスクフラ♀です。
最後の「〜かもしれない」の一文の後ろに「(日本的な意味で)」を付けた方がいいかもしれません←
クリスマスが恋人的イベントになっているのは特定の宗教に固執しない日本のみなのです。
きっとこの後はパーティーを抜け出してデートを満喫してから高級ホテルのスイートルームでシャンパンでも*´`*ロマンチックやんなあ
跳ね馬友情出演、しかし残念な軟派男になりました←
それでは皆さん、MerryChristmas!

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