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セクハラじゃない愛情表現です(フラジル+スクベル)
右へ、左へ。一周してまた右へ。
ゆらりゆらりと視線が移動する。

「…なぁベル、あれ放っといていいのかぁ?」

「ん、いんじゃね?面白いし」

スクアーロとベルフェゴールが並んで座るソファー、その位置からは広い室内をほぼぐるりと見渡せる。因みに先程からベルフェゴールがずっと目で追い続けているのは…

「いい加減諦めてくださいよー」

「誰が諦めるかこのセクハラガエル!」

「セクハラじゃありませんー、愛情表現ですー。嫌なのは最初だけですって、すぐ悦くなりますからー」

「それ世の中の変態が言うセリフだってテメー知ってるか!?」

まっすぐな金糸を靡かせながら本気で逃げ回る王子(兄)とそれを追い回すカエル帽子。
一時間程前からおいかけっこは続いているのだが、流石に疲れを見せ始めたラジエルに対しフランは汗一つかかず、何お前モンスター?と突っ込みの一つも入れたいところだが面倒なので口をつぐんだ。

「今日も平和だね」

「だなぁ」

「ふざけんなカス鮫にクソ弟、これが平和に見えんならお前らの目節穴!」

「隊長も先輩も間違ったこと言ってませんよー」

「お前は黙れ不幸の元凶!!」

若干息を切らせながら別のソファーを飛び越えて扉を開け放ち廊下へと飛び出すラジエル(さっきも屋敷内走り回ってたよなぁ)、当然ながらラジエルをストーキングしているフランもそれに次いで走っていく。
観察対象がいなくなった為つまらなくなったのか甘えるように擦り寄ってくるベルフェゴールの頭を撫でたところで、陽気なテノールボイスが聞こえて視線を再び扉へと移した。

「あらまぁ、随分と散らかってるじゃなぁい?あの子達また鬼ごっこしてるのね」

「ラジエルからしたら鬼ごっこなんて楽しいもんじゃねぇだろうがなぁ」

「それはそうねぇ」

「ルッスお帰りー、ケーキ買ってきた?」

「勿論よ、ベルちゃんがわざわざ指定したお店で買ったんだから味は間違いないわ」

開けっ放しの扉から有名ブランドのロゴ入りの箱を片手に入ってきたのは午前中から出かけていたルッスーリアだった。用事ついでにまたベルフェゴールにドルチェを頼まれていたらしい。

「早速食べるー」

「なら紅茶淹れるか」

「オレも手伝う!」

棚へと向かったスクアーロに続き立ち上がったベルフェゴールに、ルッスーリアはくすりと小さく笑みを溢した。しかしすぐに眉を八の字に下げて困ったように先程閉めた扉を見遣る。

「あなた達本当に仲が良いわねぇ。あの子達ももう少し仲良くしてくれると助かるのだけど…部屋の有り様的に」

「…いや、無理だろぉ」

「カエル変態になってるしな」

「やっぱりそうかしら?」

ふうとため息をついたルッスーリアを他所に着々と準備を進めるスクアーロとベルフェゴール。

「王子アッサムな」

「はいはい…ルッスーリアもそれでいいかぁ?」

「私は何でも構わないわ、あなたが淹れる紅茶美味しいもの」

「それはどうも…」

「しし、王子の召し使いとしてのスキルがしっかり身に着いてるな」

「召し使いじゃねぇよ馬鹿」

軽口を叩き合いながらの共同作業、しかし突然響き渡った鈍い(そしてなんとなく痛そうな)効果音がそれを遮った。それに続く悲鳴。

「ぬがごっ…!?」

「あ、すいませーん。でもぼーっと突っ立ってるあんたが悪いんですよー」

「ちっ、図体ばっかでかくて役に立たねーな」

何事かと室内から廊下を覗き込む。
すると目の前を横切った金色の影、続いて深緑とカエルさん。
床にはどうやら哀れにも捲き込まれたらしい(でけぇから盾にでも使われたのかもなぁ、)レヴィがぐったりとして倒れていた。

「う、うぅ…ボス…お役に立てず…オレは…」

「その程度で人間死なねぇよ、馬鹿言ってねぇでさっさと立てぇ」

「スクアーロか…お前に頼むしかないのは癪だが…どうか…ボス…を……」

「だから死なねぇっつってんだろ」

遺言のような(つーかまんま遺言だな)言葉を細々と紡ぐレヴィの前に呆れ顔でしゃがみこんだスクアーロに、ふっと暗く影が差した。顔を上げて確認すると、スクアーロは遠くに見えるラジエルとフランに向かって声を上げる。

「う゛お゛ぉい、てめぇら死にたくなかったら速く逃げろよぉ」

「は?なん…」

「…あ」

スクアーロの後ろに仁王立ちしている人物を見留めた瞬間、両者の顔が思い切り引き吊る。
不機嫌そうな黒いオーラを纏った彼は右手に炎を宿し緋い瞳を怒りにぎらつかせた。

「うぜぇカス共は…かっ消す」

彼が強く床を蹴って飛び出したのとティアラとカエル帽子が曲がり角の向こうに消えたのはほぼ同時だった。
戻らないスクアーロを不思議に思ったのかひょっこりと後ろから顔を出したベルフェゴールが頭上に疑問符を浮かべ首を傾げる。

「…今ボスいた?」

「おぉ、たぶんそのうち静かになると思うぜぇ」

「あー…なるほど」

二人揃って廊下の向こうを暫し眺めていると、やがて遠くから何かが破壊される音とぎゃーぎゃー騒ぐ音とが同時に聞こえてきて互いに顔を見合わせた。
少しの沈黙ののち、何事も無かったかのように口を開く。

「…紅茶、飲むかぁ」

「うん」

「そうね…レヴィもいる?」

「…一杯だけくれ…」

今日もヴァリアーのアジトは平和だ。





fin.





フランが変態になりました←
ジルさまがとても可哀想です。まあいつものことですが←
夫婦はとても平和です^p^
ジルさま受けだとほぼ確実にジルさまが不憫になるのは何故なんだろう…某俺様国並みの不憫さ←

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