狂愛症候群
2.
しばらく歩き、私達はとある商店街に来ていた。
商店街とは言っても、ほとんどのお店はシャッターが閉まっていて人の気配はあまりしない。
そんなシャッター街にある、花屋の前で私達は足を止めた。
珍しい事に、この商店街で開いている数少ない店なのだ。
「それじゃ、俺はここ見るからいつもの場所で時間潰してて」
夏輝くんはそう言って、お店の中に入ってしまった。
これは、彼なりの私への気遣いなのだ。
私はあまり花には、興味がないから。
夏輝くんは、有名な芸術一家の長男で華道をたしなんでいる。という訳で、こうした花屋で花を見るのが好きなのだ。
私はその花屋から少し歩いたところにある、画材屋に来ていた。
人は少ないけど、画材の数は豊富で私はこの店がお気に入りなのだ。
中学生の時から、ずっと美術をやっていて今では趣味で絵を書くようになった。
この静かな環境で、私は絵筆を眺めていた。
そんな私の肩を誰かが、優しく叩く。
私は振り返った。
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