狂愛症候群
2.
−助けて、ここから出して!!
心がそう叫んでいる。
口に出したくても、その言葉は出ない。
口を塞がれているから。
タオルを詰められて、腕はロープで拘束されている。そして、目隠し。
動くのは、足だけという状況。
とにかく怖い。
そして、もっと怖いのは耳元で囁かれている甘い言葉に甘ったるい声。
呪文のように囁き続けられていて、頭がおかしくなりそうだ。
突然囁きが止まる。
目隠しと口に詰められていたタオルが、外される。
目に射し込んできた、光が眩しかった。
光と共に彼の顔が、目に映る。
彼は私の顔を見て優しく微笑むと、『大好きだよ』と言ってキスをした。
そして、広いベッドへ私を押し倒す。
私の知ってる彼はこんな人じゃなかった。
抵抗出来ない私は、彼をぼんやりと見たままそんな事を思った。
彼の人形になってしまった私に、出来る事はもうない。
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