狂愛症候群
2.
久々の姉と響さんと私の3人で囲む食卓。
普段は静かな食卓だけど、今日は響さんがいてくれたおかげか笑顔が絶えなかった。
「今日から響、こっちで仕事なんでしょ?」
「うん。色々あって、拠点を日本に移す事にしてさ。これで、しばらくは会えるよね。」
響さんは、とある会社の社長で昨日までアメリカに行っていたらしい。
日本に帰ってきたのはどれくらいぶりだろうか…
響さんは途中で窓際に姉が活けてくれた、花束に目をやった。
「とても綺麗な花だけど、誰から貰ったの?」
「彼氏。」
響さんの言葉に気恥ずかしさを感じて、俯きながら私は言った。
「あぁ、清水の家元さんか。」
夏輝くんは最近、華道の腕前を完全に認められて家元になった。お祖父さんから、引き継がれたらしい。
と照れながら、夏輝くんは言ってた。
「随分、面白いチョイスだ。」
そんな意味深な言葉を言いながら、花束を見つめる響さん。
「どういうことですか?」
「んー、俺の勝手な考えだし言わないでおくよ。もし違ったら、可哀想だしね。」
「…可哀想?」
響さんが何を言いたいのか分からず、首を捻る私。
「気になるなら、花言葉を調べてごらん?」
花束に挟まるようにして入っていた、今はテーブルの上に置かれたメッセージカードを指差して響さんは言った。
『恵へ』
と書かれたカードに、私は完全に目を引かれていたのであった。
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