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アラベスク
廻り始めた運命の歯車
「なんか風が冷たくなってきたな。神来社の病室まで送ってやるよ」

「え、大丈夫だよ?」

「いいっていいって。こういう時は素直に甘えとけって!」

「じゃあ…お願いします」

「神経内科だよな。A館B館?」

「A館の6階です」

「じゃあ帰り道だ。俺はA館の7階だからよ。はい、持って」


持ってと言って渡されたのは五十嵐くんの松葉杖。


「今から帰るのに私が持つの?」

「うん、俺が神来社の車椅子押すから」


私が五十嵐の松葉杖を持って、五十嵐君が私の車椅子を押す…
想像してみたけど、なんだか可笑しい。


「五十嵐くん、骨折は?」

「もう松葉杖なくても平気だから」


そう言って半ば無理矢理渡された松葉杖は木で出来ていて、ずっしりと重かった。

人に車椅子を押して貰うねは楽なのだが、実は怖い。
いつ揺れるか分からないし、自分の押すスピードと押す人の歩くスピードの違いにも驚く事がしばしばある。


「じゃ、行くか」


でも五十嵐くんの歩くスピードはそれほど速くなくて怖くなかった。
ちょうどいい速さで病棟まですいすいと行く。
エレベーターを下りるとちょうどそこには池田さんが居た。


「池田さん、ただいま」

「彩ちゃんお帰りなさい。楽しかった?」

「うん」

「そうそう、城山くんが彩ちゃん待ってるわよ」

「城山…?」


ナースステーションに入って行く池田さん。
…誰か呼んでる?


「なんか知り合い来てる見たいだし、俺ここで帰るな」

「うん、ありがとう。楽しかったです。でも城山って私分からないんだけど…誰だろう」

「え?」


五十嵐君に松葉杖を返して手を振る。


「じゃあまたね」

「おう!「…神来社、彩ちゃん?」


名前を呼ばれて振り向けば、そこには白衣を来た男の人が立っていた。
肩まである髪に縁のない眼鏡をかけた長身の男の人…誰?


「今日から白石先生の下で神経内科の勉強をする実習生の城山侑士(シロヤマユウシ)です。よろしく」

「…どうも。こちらこそ宜しくお願いします…」


まさか、この三人でこれからあんな事になるなんて
この時誰が予測出来ただろう…



「神来社、医者?」

「あ、うん…ホラ、私の病気って珍しいから…」

「そうか…じゃ」


五十嵐くんは城山さんに会釈するとエレベーターに乗った。


「じゃあ、早速で悪いですけど部屋で神来社さんの病気について聞かせて貰っていいですか?」

「…はい」







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