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アラベスク
サクラ3
それから五十嵐くんのバイク事故を起こして入院するまでの話しを聞いた。

五十嵐くんは神奈川生まれで親の都合で何度も引越しをして幼なじみどころか友達が作れなかった事。
父親と仲が悪くて中学を卒業したと同時に家を飛び出した事。
家を飛び出してからバイクの免許を取って日雇いの仕事を転々としながら全国を旅している事。
その旅で出会った人達とのエピソードや土地の話し。

五十嵐くんの話しは入院していた私にとってとても魅力的だった。
話しを聞いて、親近感が湧いて…
もっと五十嵐くんと仲良くなりたいと思った。

(今思えばこの出会いが…)


「そうなんだ…なんか色々な場所に行けるなんて羨ましい」

「そうか?ま、自由っちゃ自由だな」

「私はあんまり地元から離れた事ないから、せっかく東京に来てるのに遊ぶ所とか分からないし…一々遊ぶのに県外に行くって事もなかったんだ」

「そっかぁ、つーか神来社は地元何処?」

「私は山梨」

「山梨か。いい所だけど、山梨って遊ぶ所あんの?」

「…富士Qとか?他県に遊びに行くにも駅迄に何時間もかかっちゃって。バスも少ないし…」

「あー…分かるかも」

「だから遊びに行くとなると時間が凄い掛かっちゃうから地元で友達と他愛もない遊びになるんです」

「ま、あれだな。神来社も退院したら免許取れよ。俺が全国案内してやるからさ!」


五十嵐くんの言葉が嬉しかった。
退院後の目標が一つ出来たから。


「うん!でも五十嵐くん事故ってるからなあ…一緒に走るの怖いかも」

「おまっ、本性出てきたな…」

「うふふ」


それから風が冷たくなるまで屋上で話しをした。
主に五十嵐くんの話しだけど…

私は無意識に五十嵐くんと自分の過去を重ね合わせて居たのかも知れない。







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あきゅろす。
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