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アラベスク
サクラ2
「あぁ、桜の花びらか」


その人は松葉杖を着いているにも関わらずスッと花びらを捕まえると私の前に差し出した。


「はい」

「あ、ありがとうございます…でも、自分で取らないと意味ないし…」

「ふーん、そうなのか?」


その人には失礼かと思ったが、私はその花びらを宙に向け舞上げた。


「アンタ、名前は?」

「…私?」

「他に誰が居んだよ」


苦笑いを浮かべるその人に初めて笑みが零れた。


「私は神来社」

「下の名前は?」

「彩」

「神来社彩か。俺は五十嵐銀河(イガラシギンガ)、よろしくな」

「あ、うん!こちらこそ」


差し出された手を握り返した。


「なぁ、その敬語やめねぇ?なんか歯が浮く」

「あ、ごめんなさい!」

「だから…大体、神来社の方が年上っぽいしさ。いきなりタメ語使ってる俺もアレだけど」

「え、同年代くらいかと思ってた」

「マジ?神来社はいくつ?」

「17歳」

「マジかっ!俺も17!」


何故か喜ぶ五十嵐くん。
笑う横顔は少し幼く見えたけど、言わない事にした。


「神来社の敬語ってキャラなの?」

「あー…私、人見知りするから、慣れると変貌する…」

「変貌ってお前ッ、ぷ」

「わ、笑いすぎだよっ!」


腹を抱え笑う五十嵐くんが可笑しくて私も笑ってしまう。


「でも、よく友達に言われるんだ。彩は最初出会った時とキャラが違うって」

「じゃあキャラが変われば信用されたって事だな」

「あ、はい、多分…」

「…おもしれー奴。ところで神来社は何で入院してんだ?やっぱ怪我か」


車椅子に乗っている私を病気だと思う人は少なかった。
嬉しいような、切ないような…

無理もない。
身長170pもあって体格もいい女が車椅子に乗っていても殆どの人がスポーツで怪我をしたと思うに決まってる。
誰も不治の難病だなんて思わないだろう。


「私は…病気です」

「あ、そうだったんだ。ごめん…」

「うんん、大丈夫。五十嵐くんはどうして?」

「俺はバイクで事故っちまってよ、足と歯を折って…馬鹿だろ?」

「うんん、私もバイクのケツ乗せてもらって無茶してたから…」

「………は?」

「あ、うんん何でもないッ!」


危うく過去の事を口にしてしまった私に五十嵐くんは『やっぱり面白い奴』と笑った。








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