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アラベスク
X'mas Present2
財布と携帯電話をバックに入れ急いで玄関へと向かう。
私のドタバタとした足音に気付いてか母がキッチンから顔を出した。


「彩、こんな時間に何処に行くの?」

「夕飯はいらないっ!」


母の質問の答えになっていない返事をして私は玄関を出て走った。
まさか男性に会いに行くのに母に送迎をして貰う訳にも行かない。
車どころか原付きの免許も持っていない私にとって出掛けるには母の送迎かバスしか手段がないのだ。
(早く免許取りたい…)

手段がバスしか無いと言っても、私が住んでいる所は田舎だ。バスが一時間に一本あれば良い方だ。
つまり、その一本に乗り遅れてしまうと、また次のバスが来るまで待たなければならない。

走りながら体に受ける冷たい風がナイフの様に感じた。
世間では、いくら温暖化と騒がれていても十二月の夕暮れは寒い。
しかも私は今日に限ってミニスカートを履いている。今更、着替え来ればよかったと思っても後の祭りだ。

今はそんな事よりも愛しい人に一刻でも早く会いたくて仕方がなかった。


「ハァ…ッ、これだから田舎は嫌よ!」


自宅から二十分以上走って、やっとバス停に到着した。
既に空は紫に包まれていて、吐く息が真っ白に浮かび上がる。

疲れたせいで足元がよろめくもバスの時刻表を確認すれば、次のバスが到着する十分前。
私は軽くその場で足踏みをし乱れた呼吸を整える。じんわりと額に汗が出てくる。
(化粧が溶ける…)

マスカラやアイラインが汗で滲んでいないか気になり指の腹で目尻に向かい擦り上げる。
化粧ポーチを持って来るのを忘れたと思いながらコートのポケットに手を突っ込めば、リップクリームが入っていた。
それを唇に塗りながら時間を確認すれば、バスが来る八分前…

私は次のバス停に向かい歩き始めた。
とてもその場で待っては居られずに、次のバス停を目指した。

(侑士、今更連絡して来るなんて、どういうつもり…?)

吐き出した息を見つめ手を伸ばす。
そこにあるのに掴む事は出来なくて、当たり前だと自嘲する。

次のバス停に辿り着いた時、調度到着したバスに乗り込んだ。








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あきゅろす。
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