[通常モード] [URL送信]

アラベスク
個人授業3
「血液製剤てあの小さい瓶に入ってる点滴?」

「はい、一日10個で5日間続ける予定でした」

「血液製剤使ったんや…」

「人の血液から作られた薬だから怖いとは思ったけど…」

「血漿交換もしたん?」

「その時は血液製剤だけで…と言っても拒否反応が出ちゃって2日しか出来なかったんです」

「えっ、拒否反応でてもーたん!?」


城山さんが驚いたのは血液製剤で拒否反応が出る確率がとても低いからだ。
私の体は生活に似て臍曲がりなんだと思う。


「…無菌性髄膜炎になりました。40℃越える熱、頭痛と吐き気が2、3日続きましたけど、その時は病状の回復が早くて2週間で退院出来たんです」

「それもそれでエライ早い退院やなあ…」

「一応受験生だったんで…でも入院してる間に授業は結構進んじゃってて、受験が本当に怖かった…部活も出来ないし、中学最後の学校生活は本当に詰まらなかったです」

「それでも受験して高校行ったんや」

「親よりもおばあちゃんが教育熱心で私が幼稚園の頃から地元の進学校に入れたかったんですよ。高校に入る頃にはステロイドも抜けて体も大分元に戻ってたので、また部活に入りました。本当に…少し瞬発力が鈍った位で前と変わらない生活に戻って…病気の事なんか忘れるくらい…」


あの頃、また両親との関係がぎくしゃくし始めた。
ある事件をきっかけにクラスの女子全員から嫌われた時期だった。
その事件の延長でチンピラの入った定時制の生徒と喧嘩になり、本当に危ない所だった。

祖母の為に入った学校で自分の夢が見付けられずに悩んだ。
こんな学校に居ても仕方がないとさえ思った。
それでも辞めずに入院しても勉強を続けるのは部活が私を支えてくれていたからだ。

学校を辞めてしまえば部活も辞めなければいけない。
部活と仲間が私を引き止めてくれた。


「1年の秋にまた足が痺れ出して…でも再発を認めたくなくて部屋に引きこもりました…数日後に県立病院へ行って即入院、またステロイドの服用を始めました。それからステロイドは続けてます」

「…もう9ヶ月続いてるん?」

「そうなりますかね…今は4錠ですけど」


あれから約1時間喋り続けて少し疲れてしまった。
座っているのもそろそろ限界だ。


「悪いんですけど、少し休んでもいいですか?」

「あ、悪い!疲れさせてもーたな…そろそろ夕飯の時間やし、また明日話し聞きに来てもええ?」

「はい」

「おおきに。また明日よろしゅう」

「城山さんも大変ですね…」

「まあ大変やけど楽しいねん。神来社さんの話し聞くんも。ほな、おやすみ」

「おやすみなさい」








[*前へ][次へ#]

13/36ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!