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【紫電様より】比翼

※コラボ注意











今日は6月6日。
雪音殿のこの世界での誕生日である。
チーム5D’sのメンバーはささやかながら誕生日会を開くことになった。
その準備のための時間稼ぎをするため、私は雪音殿を連れて外に出ることになった。
私は少し離れた大きい公園で行われているバザーにある、オススメのジュエリーショップに連れて来た。
この店は『職人の技が売り』をモットーにしているので、すごく凝った技巧の、見事な品々が安値で売っている。
バザー自体、利用する者が多くないからちょっとした穴場である。

「よくこんなすごいお店を見つけましたね!」
「まあいろいろあったんですよ・・・」

無理やり連れてこられた苦い記憶を思い出して苦笑する。
誰にって?・・・此処では割愛する。

「でもどうして私に此処のこと教えてくれたんですか?」
「こんなに良いお店を独り占めしてたらバチが当たっちゃうでしょ?だから、いつか時間が取れたら一緒に行こうかなって思ってたんですよ」

『バチが当たる』と言うのは冗談だが、一緒に行こうと思っていたのは本当だ。
時間稼ぎという形になってしまったが来れて良かったと思う。 
彼女の趣味に会わなかったらどうしようかと思ったけど、ショーケースを覗く姿を見ている限り杞憂だったようだ。

「あっ・・・」

雪音殿がショーケースの中で何か見つけたらしく小さく声を上げた。
それとなくその視線の先を見てみると、そこに天使の片翼を模ったブローチが二つあった。
翼の根本には宝石が付いている。
一つは銀の翼に紫の宝石、もう一つは黒水晶の翼にオレンジの宝石という形だ。
この二つは形が線対称になっていて、対となっているように見えた。
それにしても、この色合いは明らかに雪音殿とクロウ殿だよなぁ・・・。

「・・・気に入ったんですか?」
「は、はい。この黒い方、クロウさんみたいだな、て思って」
「確かにそうですね」

雪音殿は銀色の方には触れなかった。
頬が少し赤い所を見るとあえて触れなかったのだろう。

「何かお気に召されましたか?」

調度良いタイミングで店員の女性がやってきた。
多分会話を聞いていたのだろう。

「はい。この翼のブローチを両方ください」
「かしこまりました」
「えっ、玲良さん!?」

何でバレたの、って顔をして雪音殿はこっちを見る。
・・・反応が可愛いな。

「此処へ来た記念です。受けとって下さい」

店員が手早くブローチを小箱に入れている間に、他の店員に頼んで会計を済ませる。
私の名誉のために言っておくと、誕生日プレゼントは別に用意してある。

「どうして、両方共買ったんですか?」

店員から小箱を受けとった雪音殿に問われた。
きっと冷やかされたと思っているのだろう。
私にそんなつもりは一切無いのだが。

「比翼の鳥に見えたから、ですかね」
「ひよく?」

普段は使われない言葉に雪音殿は首を傾げる。

「伝説上の鳥で一つの目と片翼しかない二羽の鳥の事です。彼等は常に一体となって飛ぶ、と言われてます。一方だけ買ったらそれを引き離す様な気分になるから嫌だったんですよ」

ましてやクロウ殿と雪音殿を象徴する色じゃ尚更だ。
店側の戦略に騙されていると罵りたきゃ罵れば良い。

「玲良さんって意外にロマンチストなんですね」
「意外!?」

雪音殿に悪気はないのだろうが、その台詞は軽く傷つく。
だからってやられっ放しは性に合わないから少しだけ仕返しをする。

「そうそう。もう一つのブローチはクロウ殿に渡しては如何ですか?」
「ど、どういう事ですか?」

「比翼の鳥は愛情の深い夫婦にたとえられるそうですから」

その瞬間、雪音殿が耳まで赤くなった。

「〜〜っ!玲良さん!人をからかって!!」

私は一目散に店から出た。
続いて雪音殿が追って出てくる。
それとほぼ同時に携帯からメールの着信音が鳴る。
メールを開くとアキ殿からだった。
内容は『準備が出来たから帰ってきて。今度は私もジュエリーショップに連れてって』と書いてあった。
・・・後半関係無くね?連れてくけどさ。

「ま、待ってください!」
「ハハッ、待てって言われて待つ人はいませんよー!」

数メートル後ろから雪音殿が追い掛けてくる。
彼女には申し訳ないけどこのままガレージまでランニングをしてもらおう。
お楽しみはこれからなんだから、さ。

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あきゅろす。
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