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紫煙

かちりと火をつけて煙を吐き出す。
「うちの廊下禁煙って言ったの覚える気あるんですか」
その途端目当ての住人が現れて眉をひそめる。
「いいだろ、すぐお前が入れてくれるから」
言ってのけるとため息をつかれて、しかし扉が大きく開かれた。
「どうぞ。灰落としたらぶん殴りますからね」
「こえー」
肩をすくめながら敷居を跨いだ。

ぐだぐだと酒を飲んでからベッドに雪崩れ込んで、終わってからまた火をつけると隣から手を伸ばされた。
「ん。吸うなって?」
「灰散らかさなきゃ別にいいです」
「ふーん。灰皿、と…あ、やべいっぱい」
服を探って携帯灰皿を取り出すも、すでに吸い殻でいっぱいだった。
「手間のかかる男ですね」
カン、と軽い金属音を立てて空缶が置かれる。
「何?」
「うち灰皿ないんで」
「悪いな。…モコモコミルクソーダ?お前もこんなの飲むの」
「あの人くらいですよ、良い年でこんな甘ったるいもの飲むのって」
「うわキッツ。でも否定できねえ」
「好きじゃないって言ったら箱買いしてうちに持ってくるのはやめてくれました」
「半泣きだっただろ」
「全泣きです。『私は…好きなんだけどな…』って泣いてました」
「ぶふ」
当たり前だがよく似た声真似に吹き出し、ついでに妙なところに煙を吸い込んでむせた。白い目が痛い。
「あーウケる。そういえば、お前は吸うなって言わないのな。あいつは口うるさいのに」
「ハタチと同時に禁煙しました」
「へえ」
「人が吸う分には別に気にしません。…それより」
「ん。もっかい?」
紙巻きを空き缶に押しつけて、薄く煙が漂う中、紫の瞳が細められた。


リグヴィリブーム。


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あきゅろす。
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