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小説
永遠なんていらなかった(捏造ED)(3000hitレジ子様へ)
ひどく軽い引き金を引いてからエデン議事堂の中枢へと走った。
重厚な扉を抜け回廊を走る。
「走れ、この奥だ。ファルシがいる」
「敵影確認!10時に機甲兵ヴァッへ3!」
「駆け抜けろ。移動速度は遅い」
「奥のロックを解除する間に追いつかれます!」
考える。
官邸を落とした俺たちは、迅速を旨としたためかなりの軽装だった。火力が足りない。そもそも竜騎兵以外戦闘機や艦隊での出撃が主な騎兵隊は、重装備自体に慣れていない。
「……解除は、いらない」
「しかし扉が」
「あれを使う」
指差す。
遠目に見えるヴァッへ、それに続く―機甲兵、ヴィーキング。
PSICOM専用配備、中でも試験的にパラメキア艦隊にしか行き渡っていないはずだ。
「単座ですよ!?パイロットを排除しても誰も使えないんじゃ……」
「俺が乗る」
「リグディ大尉!?」
「機甲兵イェーガーの進化型だ。練習機を何台潰したかもう覚えてないが搭乗は3000時間は軽いな。―乗れる。あれで回路を焼く。ついでにファルシも丸焼きだ」
笑う。別に面白くもないが『隊長』が笑えば部下は安心する。浮かんだ言葉を頭から追い出す。
「丸焼きですね」
部下も笑う。恐怖を吹き飛ばすために笑う、前線の兵士特有の笑いだ。
「とにかくあいつをもらってからだ。援護頼む。間接部は装甲が薄い」
「イエス、サー!」
機甲兵を奪い、ついでに現れたPSICOMの下っ端の重火器を奪い、精鋭が来る前に分厚い扉をくぐった。閉じる直前、近づくプラウド・クラッドの機影に銀髪の友人を思い出した。
コクーンを守るという。そのためにパージを敢行し、ルシ狩りでは自ら飛空戦車を駆り剣を交えたそうだ。そうまでして守る価値のあるものだろうか。コクーンは、聖府は、―ファルシは。
下界のルシたちがファルシを討つという。同じ敵を持ち、かつて協力したこともあったがどうしても譲る気にはならなかった。
「あの人の夢はあの人の血で汚れた俺たちが叶えるしかねぇんだよ」

エデンを駆ける。
街ではない。その名の元であるファルシの中を、おそらく下界のものであろう見たことのない機械やモンスターを蹴散らしながら進む。官邸から議事堂までの道のりに見た市内にはモンスターが溢れていた。どこから湧くのだろう。どれだけ蹴散らせば、あとどれほど進めばファルシ・エデンの最奥にたどり着くのか。
「……あれは」
明滅する赤い光。今までの通路と明らかに違う、開けた空間。その先にいる3柱の女神像。
「見つけた!」
隊員たちが駆け出す。銃を構える。
機甲兵に乗ったままの自分も火器を構え、
―ぞくりとした。
見られている。
どこだ。どこから。
「大尉?」
あとは撃つばかりのところで微動だにしなくなった自分を不審に思ったのだろう、部下のひとりが声をかける。
だめだ。ここは、良くない。
「さが……」
閃光。衝撃。

体が動かない。首だけを巡らせて周囲を見渡すと異形のシ骸が何体もいた。シ骸と言えば生き物に容赦なく襲いかかる化け物のはずなのに、うろうろとするばかりで他のモンスターと争う様子もない。
時々こちらを窺っているようだがそれだけだ。どうしてか自分を呼んでいるような気がしてならない。
「みんな…やられちまったのか」
聞き覚えがある。
……下界のルシたち。
「先に行かせて、たまるかよ……!」
腕が動かない。操縦桿を握ることができない。それでも呟くと引き金だったかのようにシ骸たちが暴れ始めた。暴れる?いや、これまでに見たシ骸たちとは明らかに違う、連携の取れた動きは。見覚えがある。この隊列。
「……まさか」
信じたくない、とかぶりをふる間にルシたちは攻撃をかわし奥へと駆けていった。
長かったかもしれないし一瞬だったのかもしれない。ルシたちが去って、部下だったものたちへ呼びかけて、そうするうちに―

目眩く閃光。迸るマグマ、溢れる海。
ラグナロク―神々の終焉。
それら全て包み込む、白い輝き。
耐火、耐熱にすぐれたヴィーキングの装甲はいつの間にか開いていた。死んでいなければおかしいのに。手足が動く。コックピットを降りる。
風が吹く。
草の、木の、水の匂い―生命の匂い。
蒼い闇を突き地平線が黄金に染まる。
「奇跡とはこのことを言うのだろうな」
もう一度聞きたいと願った声。己の手で封じたはずの人。
まだ引き金の感触が残っている。
「使命を果たしたルシはクリスタルになって永遠を手に入れる。――繭に包まれた永遠はいらない」
近づく足音。草を踏みしめて。
「振り払った明日があるなら、もう一度掴み取ればいい」
風が吹く。もとは白かったマントが翼のようだ。
「私が憎いかもしれない。副官でなくてもいい。それでも、」
世界の色が変わる。日が昇る。
「隣にいてくれないか」
見果てぬ夢に、手を伸ばす。




title:Aコースより

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