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ゴトウサンノ片オモイ
7p
「で、お前は何なんだよ。泥棒なら悪いけど取る物は何も無いぜ」
 引っ越したばかりで財布はすっからかんだ。
「泥棒じゃありません。僕は、あの、霊です」
 優男がそう答える。
「はぁ? 霊だって? そんなのいる訳ねーだろ。寝ぼけてんのか、あんた」
 思わずそう言ったが、寝ぼけているのは俺の方だ。
 何ちゅう夢だ。
 霊と来た。
 まあ、さっきまで黒い霧のような影の形でいたことからも、こいつが普通の人間ではないことは確かだろう。
 だが、霊か。
 この俺が霊を見るなんて、エセ拝み屋何て仕事をしている報いなのか。
 しかし、案ずる事無かれ、コレは夢だ。夢から覚めればこの男ともおさらばだ。
「あんた、本当に霊なのか?」
 念を押して訊いてみる。
 優男は大きく頷いた。
「はい。自分でもいまだに認めたくないことですが、本当に霊です。一年前に、僕はこの部屋で死んだんです。それからずっと、成仏出来ずに僕は、ここにいるんです」
 自称霊の優男は悲しそうな顔をして俯いた。
「この部屋で死んだって、どうしてまた。病気か何かか?」
 不躾に俺が訊くと、優男は首を激しく横に振った。
「違います、餅を喉に詰まらせて死んだんです」
「はぃ? 冗談だろ?」
「本当です。凄く苦しかった。僕、死んでから、こうして霊になってしまって……仕方なく、死んだ後の自分の体を外側から見ていたんです。死後から二週間近くたってから僕の遺体は発見されたんですけど、そのころには遺体は見られたものじゃなくなっていました」
 眉を下げる優男。
「何だよ、それ、二週間たってから遺体を発見って変死じゃねーか。それに、おかしいだろ。普通、二週間もあれば、あんたと連絡が取れなくなって、家族とか友達とか、会社の人間とかがおかしいと思って様子見に来たりするだろ」
「はい、変死ですね。警察も部屋に来ましたけど、でも、事実は単に餅を喉に詰まらせただけですし。発見が遅れたのは、友達の方は良く分からないですけど、会社は……僕の勤めていた会社、ブラック会社でして、社員が急に連絡が取れなくなってそのまま辞めるってことがしょっちゅうの会社でしたから、無断欠勤で特におかしいと思う人なんていませんから、いちいち様子なんて見に来ないですし……。家族は……いませんし。近隣住民の方が、僕の部屋から異臭がするって警察に連絡したらしくて、それでやっと僕の遺体は発見されたんですよ」
 何とも、とんでもない話だ。
 俺は返す言葉に困った。


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あきゅろす。
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