ゴトウサンノ片オモイ
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南のストーカー探しを始めて十日。
俺達は下校途中、南の後を付け、南の周辺に目をギラギラ光らせてストーカーを探した。
そりゃもう、俺なんかは子供の頃に夢中でやった小さく絵描かれた物や人の中から目当ての人物を探すというゲーム以上に夢中に探した。
その結果、俺達は気付いた。
南と南の周辺を見張った十日間の内、実に七回、南の描いた似顔絵の男を南の近くで見かけたのだ。
あの帽子。
あの帽子をかぶった男が、ある時は南の乗る電車の中に、またある時は南が寄った本屋に、そしてまたある時は、学校の校門の前にいて、南が校門を出ると、そろりと南の後をついて行った。
南の団地でも、見かけた。
やつは、南の住む棟の近くに大体いて、家へ向かう南のことをジッと見ているのだった。
これはもう、間違えないと思われる。
南のストーカーは、この、big hungry帽をかぶった男だ。
ストーカーを突き止めた俺達。
作戦を次の段階に動かす時がついに来た。
ストーカーを捕まえる。
そして、一発殴ってやる……のは俺の独断。
この時俺は、十日間も探偵ごっこをさせやがって、見てろよ、と、ストーカーに対して闘志がメラメラと燃えていたのであった。
相談の結果、ストーカーを捕まえるのは、やつが学校の校門の前で南を待ち伏せしている時に、ということになった。
学校周辺は勝手知ったる俺達の庭。
そこで上手いこと、やつを学校の裏にある学校の塀とのビルの裏手に挟まれた袋小路まで追い詰めて、やつを捕まえ、まずは話を聴こうって寸法だ。
それから先は、こちら次第だ。
やつが学校の校門前に現れるまで、俺達は今まで通り、南の後をついて南を家まで見送ることにした。
まだ、何があるか分からないし、南も不安そうだったからだ。
案の定、やつは、南の周りをウロチョロとしたし、良い判断だった。
南の降りる駅から南の家までは、主に平川がついて行った。
何だかんだで、平川が一番南を心配しているように思える。
さて、この計画は、しばらくして実行に移された。
やつが学校の校門前に現れたのである。
やつの姿は教室の窓から確認できる。
窓から、ストーカー男を見下ろしながら、ついに来やがったと俺達の拳に力がこもる。
南はやたらと慌てていた。
授業が終わり、帰るだけになった俺達は学校の玄関ホールの下駄箱の前に集まった。
「南、大丈夫か?」
緊張した面持ちの南に、友人の一人が声を掛ける。
南は、青白い顔を俺達に向けて、「大丈夫だよ、行ってくるぜ」とそう言って、カチコチに動きながら一人で玄関を出て行った。
南を見送った後、俺達は、グループチャットをそれぞれ確認する。
俺達を先回りして、やつを見張っている友人と連絡を取る為だ。
『今、南が出てったから』
玄関ホールにいる友人の一人がそう、グループチャットで報告すると、外の友人から、『ラジャー。あの帽子の男は、まだ校門の前にいるぜ』と返信が来る。
『了解。俺らもそっち向かうわ』とは、俺の隣にいる友人のメッセージ。
俺達は、スマートフォンから顔を上げて頷き合う。
その中には勿論、平川も葛もいる。
俺達は校舎を出ると自然とバラバラになって歩き出した。
前を向けば、南がぎこちない動きで校門に近付くのが見える。
俺は、歩く速度を少し落として南との距離に気を付けた。
南が校門を出た。
『緊張する』
グループチャットに南のメッセージ。
『俺がついてる!』
全員が同時に同じメッセージを南に送った。
頑張れ、とか、大丈夫、とかじゃなくて、ただ、俺がついてる、と。
何やってんだ、俺達。
こんなのが励ましになるのか。
自分で言っておいてそう思った。
ストーカー何て訳の分からないものに脅かされてる南が、こんな言葉でどうにかなるなら万々歳だろ。
南から返信が来た。
『助かる』
どうやら、俺達は、少しは南の励ましになっているようだ。
俺の口角が自然と上がった。
俺のやる気にさらに火が付いた。
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