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虹蛇
3p
 日下部は台所に立ち、天谷から渡されたコンビニの袋からコーラを取り出してコップに注ごうとする、が。
(あいつ、俺のこと不良とか言いやがって。あいつは、いつも偉そうに説教しやがるよなぁ……よし、少しからかってやるか)
 日下部は一人、ククッと笑うと、コーラを冷蔵庫にしまい、代わりにトマトジュースを出した。
(俺を馬鹿にすると、どういう事になるか思い知らせてやる。これで天谷のやつも未成年失格だな)
「日下部、何やってるんだよ、遅いし」
 天谷が座っているソファーから立とうとする。
「あああーっ! 今行くから座ってて!」
 慌てて言う日下部に、天谷は不審そうな顔を向けるが、日下部に言われるままにした。

「お待たせ、天谷、はい、飲み物」

「なんだよ、これ、コーラと違うじゃんか」
 目の前に置かれた真っ赤な液体の入ったグラスに顔をしかめて天谷は言った。
「これはトマトジュースだ。天谷、野菜ジュース好きだったろ。ちょうどうちに美味しいトマトジュースあったから飲んでもらおうと思ってさ」
 日下部はニヤニヤしながらそう言う。
「トマトジュースはわかったけど、日下部さ、お前、なんでニヤついてんだよ」
 天谷が鋭く日下部を睨む。
 日下部は天谷から視線をそらせた。
「はぁぁーっ? ニヤついてなんかいねぇだろぉ。何言ってんのかなぁ」
 日下部の、堪えている笑い声が漏れた。
「お前、なんで俺から目をそらして笑ってるんだよ」
「笑ってないよ。クッ!」
「おい、怪しいな、あっ!」
「へっ?」
「さては、このトマトジュースに、お前、何か仕込んだんじゃないのか?」
 天谷は日下部に人差し指を向けズバリと言った。
「はっ、はぁぁーっ? 何か仕込むとかあり得ないってぇ!」
 日下部の額に汗がにじむ。
「うーむ、お前が何か仕込むとして、例えば……」
「た、例えばぁ?」
「タバスコとか」
 その天谷の答えに日下部は気が抜けた。
 日下部の顔は完璧に呆れ顔になっていた。
「タバスコ仕込むとかねぇよ! そんなベターなの、ネタ以外でやらねぇから! いいから飲めよ、お前が飲まないとせっかくのトマトジュースが無駄になるんだぜ」
「なに怒ってんだよ。じゃあ、一回お前自身が飲んでみろよ。お前が飲んでなんともなかったら飲むから」
「疑い深いやつだな。わかったよ、ほら!」
 日下部はテーブルに置かれたグラスを手に取るとトマトジュースを三口ほど飲んだ。
 天谷はトマトジュースを飲む日下部の様子をジッと観察する。
 トマトジュースを飲んだ日下部に特におかしな様子はない。
「どうだ、なんにもないだろ。満足した?」
 勝ち誇った風の日下部に、天谷は舌打ちをすると、日下部からグラスを奪い取り、トマトジュースを、喉を鳴らして飲んだ。
 ゴクリゴクリという音が部屋に響く。
「おい、天谷、そんな煽って飲んで大丈夫かよ?」
 日下部が慌てて天谷のグラスを持った腕を掴む。
 だが、もうグラスは空だ。

「天谷?」
「…………」
「なぁ、天谷?」
「なにこれ」
「天谷、怒った? ごめん」
「なにこれ……おいしいじゃん!」
 天谷は目を輝かせて空になったグラスを見つめている。
「は? え、あ、ああ、だろっ?」
 日下部は明らかに戸惑っている風だが、天谷はそんな日下部の様子を全く気に留めなかった。

「日下部、おかわり!」




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