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虹蛇
4p
「あの……」
「はぁ、なんかもう死にたい」
「えっと、すみません!」
「てか、日下部が死ね! 火の無い所に煙は立たないって言うじゃん! キスマークとか、あいつ……」
「あの、すいません、あれ、取ってもらえません?」
「へ?」
「羽根、取ってくれたら助かるんだけどな」
 独り言を呟いていた天谷に、バドミントンのラケットを持った女子が木の上を指差して話しかけていた。
 天谷が見上げると白いバドミントンの羽根が木の枝に挟まっているのが見えた。
「ああ、あれ、うん、わかった。待ってて」
 天谷は背伸びをして羽根に手を伸ばす、しかし、羽根は天谷の手をかすめるだけでなかなか取れない。
「あれ? えいっ! 届かないな」
「頑張って!」
 天谷は応援に答えようと頑張って手を伸ばす、が羽根は天谷の手に入らない。
「あの、大丈夫?」
「あー、ごめん、もうちょっと待ってて、えいっ!」

 天谷は焦りを感じていた。
 ……羽根が取れない。

「どきな!」
 クールな声が響いたのと同時に、羽根に小石が当たる。
 羽根は小石に弾かれ地面に落ちた。
 小石は天谷の頭に落ちた。
 天谷が頭を抑えて「うっ」と声を上げた。
「どきなって言ったろ、鈍いね!」
 声の主は真っ直ぐ天谷の方へ歩いてくると、大丈夫かよ? と言って天谷の顔を覗き込んだ。天谷が声の主の顔を見る。たまに日下部と小宮と一緒にいる女子だった。
 天谷も彼女と話したことはあったが、天谷は彼女の名前を覚えていない。
 彼女は驚くくらいに金髪に染めたロングヘアーの髪をポニーテールに結わき、胸に一連托生と刺繍の入ったピンクのスカジャンを着こなすヤンキーなファッションスタイルと言葉遣いだったがスッキリとした綺麗な顔をしている。
「おい、天谷、なんだよ、人の顔、じっと見たままでさ! 石に当たって壊れた?」
「ご、ごめん。壊れてない」
「ならよかった。……おい、あんた、はいよ、これ」
 ヤンキーな彼女は羽根を、ラケットを持った女子に放り投げる。
 ラケットを持った女子は羽根をキャッチして「ありがとう」と言うと、ヤンキーな彼女にお辞儀をしてこの場を去って行った。
 天谷はヤンキーな彼女と二人きりになる。

 天谷はヤンキーな彼女とぎこちなく会話をしていた。
 ヤンキーな彼女はだいぶおしゃべりであった。
「てっきりさ、日下部はアンタと一緒にいるんだと思ったら、別行動とはね。なんか、一人の時に話しかけて悪かった?」
「いや、そんなことはないけど」
「なら良かったけどね。あれさ、天谷、確か日下部と小宮と同じ高校だっけ?」
「そうだけど」
「日下部って高校の時からあんなバカだったのかよ?」
「ああ、そうだったかな」
 ヤンキーな彼女は、ははっ、マジかと機嫌よく笑った。
 天谷は少しもおかしい気持ちになれなかった。
(うっ、なんか気まずいな。こいつが俺の名前を知っているのに俺の方はこいつの名前を全くわからないし。ああ、こいつ、早くどっか行ってくれないかな)
 天谷は、ヤンキーな彼女に気付かれぬようにこっそりとため息を吐く。


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