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虹蛇
3p
「噂ってなに?」
 天谷が聞いた。
「いや、日下部のやつ、首に絆創膏、めちゃくちゃ貼ってるじゃん。アレ、キスマークを隠しているんじゃないかって、女子の間で噂になってるんよ。なんで絆創膏してるのか小宮は知らんって言ってるし、日下部本人ははぐらかすしさ。ウチらも気になっちゃって。天谷くんさ、日下部と仲良しじゃん、何か知らない?」
 サラサラのロングヘアーの女子が言う。
「はぁ? キスマーク? 俺は狂犬に噛まれたって聞いたけど?」
 天谷は唖然として答えた。
「ぶはっ! 狂犬! 日下部のやつ、決まりだな! あいつ、どんなプレイしてんだよぉ!」
 唇にピアスをしたスキンヘッドの男子が笑う。
「ショック、私、日下部狙いだったのに。あいつ、彼女できたってこと?」
 サラサラロングヘアーの女子が言う。
「遊びの女じゃねーの? 日下部、モテまくってるから女喰い放題だろ」
 天谷に始めに話しかけてきた男子が言う。
「日下部はそんなやつと違うわよ。お前とは違うんだよ!」
 ショートヘアーの女子が言う。
「そうよ、日下部はあんた達とは違うのよ!」
 サラサラロングヘアーの女子が言う。
「お前ら、日下部の味方かよ!」

 天谷はめまいを感じながら話を聞いていた。

「おい、早く日下部のところ行って、あいつ、からかってやろうぜ!」
「もう、やめなよー」
「ははっ」
「あ、じゃあな、天谷!」
 誰かがそう言って、騒がしい四人組は天谷から離れて行った。
(キスマーク? 彼女? 遊びの女? 日下部? はぁぁぁぁーっ?)
 天谷は始業を告げるチャイムの音を聞くまでの間、しばらくその場に立ち尽くしていた。



 午前の講義が全て終わると天谷は一人で大学の中庭に来た。
 日下部から何度かメールが入ったが、天谷は無視した。
 売店で買った、きな粉パンをかじり、牛乳をストローで飲みながら、天谷はリュックにいつも入れている小説を読んだが、四人組から聞いた日下部の話が頭をよぎってしまって小説に集中出来なかった。

『いや、日下部のやつ、首に絆創膏、めちゃくちゃ貼ってるじゃん。アレ、キスマークを隠しているんじゃないかって』
『ぶはっ! 狂犬! 日下部のやつ、決まりだな! あいつ、どんなプレイしてんだよぉ!』
『ショック、私、日下部狙いだったのに。あいつ、彼女できたってこと?』
『遊びの女じゃねーの? 日下部、モテまくってるから女喰い放題だろ』

「くそっ! はぁっ……」
 天谷は小説を置いた。
(あんな話、信じるわけじゃないけど、何だろう、モヤモヤする)
 天谷は地面に転がるスマートフォンをチラリと見る。
(日下部に確かめる? いやいや、確かめるまでも無い! 絶対無いだろ! 昨日は一緒にいたんだし、首の絆創膏はそんなんじゃないだろ!)
 天谷は首を横に振った。
 天谷からため息が漏れる。
(はぁっ、あんな話を気にしてるとか、俺って割と嫉妬深いのかな……)

『遊びの女じゃねーの? 日下部、モテまくってるから女喰い放題だろ!』

(万が一、日下部にそういう相手が出来たとして、どうよ? 仕方ない……よな。俺じゃあ、あいつの、そういうの、満たしてやれないし)

『あいつ、彼女できたってこと?』

(もしも、日下部に彼女が出来たら……やっぱり仕方ない?)


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