終演の音
意識を失くす前、最後に聞いたのは、何かが切れる音だった。
――― ブツン
ああ、またこの音だ。
いつもいつも死ぬ直前に聞こえる音。
何かを繋いでいたものをムリヤリ引き千切ったような、そんな音。
ほら、また、
聞 こ え た
―――――― ブ ツ ン
気がつけば血の海。
血だらけの自分。
ぐちゃぐちゃになった、おそらく一人分の、死体。
腕がないから、多分ハンディーだ。
ごめんね、と呟いてその場から逃げ出す。
とにかく、早く家に帰らないと。
また、あの音が聞こえる前に。
早く、早くと自分を急かして走り出す。
その時背後で パン、と乾いた音がした。
――― ブツン
ああ、そうか、この音は
ああ、そうか、この音は
終演の音、だ
終演の音、だ
10.03.01
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