ただ彼を愛することだけが唯一の世界
「いい加減、止めたらどうだい?」
金眼の彼は血に塗れて、楽しそうに言葉を紡ぐ。
「俺はただコイツを守ってるだけだぜ?」
コイツを、と彼は自分の胸元を指さす。
「何気ないことで戦場を思い出すコイツが、助けてって言うから」
「死にたくないって言うから、俺は俺以外を殺すんだ」
呆れたように、スプレンディドは言う。
「過ぎた愛情だね。…いや、君の場合は自己愛か」
「そんなんじゃねぇよ」
「君はフリッピーで彼もフリッピーだ。君と彼は同一人物だ」
「わかってねぇなぁ、ヒーローさんよぉ」
つまらなさそうに、それでいて嬉しそうに、フリッピーが続ける。
「俺はコイツに造られた存在で、フリッピーだけどフリッピーじゃない。フリッピーによって命を与えられた存在だ。だから俺はコイツを守る」
「それが彼を苦しめると分かっていても?」
「それがコイツの望みだ」
「違うね。君が殺しに快感を覚えたことに対して、殺しを正当化するためにそんなことを言うんだ」
「いい加減黙れ、腐れヒーロー」
手にしたナイフを投擲しながら、フリッピーは走り出す。
「俺はコイツを守るだけだ。だからアンタも死んでくれ」
守りたいから殺す
たとえそれがコイツを苦しめることであるとしても
俺はそれ以外の愛し方を知らない
title by 不在証明
10.01.28
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