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※微グロ




赤い赤い小さな果実

潰れて崩れて形を無くす

崩れて潰れて果汁を流す

滴る赤い液体が

溢れ出る液体が

何か――関連付けてはいけない何か――を

彷彿とさせる

赤、赤、赤、赤、赤、

流れていく

ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、

染めていく

赤、赤、赤、赤、赤、赤、

赤、赤、赤、赤、赤、赤、

赤、赤、赤、赤、赤、赤、

赤、赤、赤、赤、赤、赤、

あ か い い ろ を し た も の が 、

な が れ て 、

な が れ て ――

手が赤い

濡れている

どうして?

―ぽたぽたと流れる雫

ああ

苺を潰してしまったからか

―部屋に充満する甘ったるい匂い

―むせ返るような血の臭い

ここは何処だ?

僕は部屋にいたはずだ

それなのに何故

何故、血の臭いがする?

―頭が痛い

―潰れた苺が

―流れる果汁が

いやだ

思いだしたくない

―甘い匂いが

―血の臭いが

忘れていたい

―頭が痛い

忘れたままで、いい

―頭が痛い

思いださないままで、いい

『そんなのは無理だ』

煩い

『諦めろ、認めろ、これは俺が』

煩い

『お前が』

黙れ

『やったんだ』

黙れ!!

『認めろよ、フリッピー』

散乱していた意識が繋がった

思い出した

潰れているのは苺じゃない

あの赤いものは苺じゃない

潰れているのは――

「ああああああ!!!!」

潰れているのは人の頭部だった
家に遊びにきていた子供たちだった
殺してしまった
潰してしまった
崩してしまった
あいつが
僕が
僕たちが
部屋中にむせ返るほどの血の臭い
その中に紛れて
少しだけ甘い匂いがした
匂いを辿って行くとそこはキッチンで
鍋の中に潰れた苺が入っていた
鍋の横に置かれているのは砂糖の入った器
それを見てようやく、苺のジャムを作ろうとしていたことを思い出した
楽しそうにしていた子供たちを思い出す
「…ごめん」
明日生き返るであろう子供たちのために
潰れしまった赤い果実に砂糖を加えて火にかけた
甘い匂いが部屋に満ちる

(だからといって血の臭いが消えたわけではないのだけれど)


09.10.19

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