[携帯モード] [URL送信]
IF
痛い。
両足がとても痛い。
まるで痛覚がいかれてしまったかのような、そんな激痛が下半身を支配している。
体を起こそうとしたけれど、少し動くだけで下半身の痛みが酷くなるので諦めた。
つまりオレは自分がどういう状況にいるのか知ることができない。
横たわっている今、わかっているのは、両足がとても痛いということだけ。
それにしても一体、何が起こったというのだろうか。
痛みを堪えて、首だけ動かして周りを見回す。
少し離れた所に血が着いたヘルメットが見えた。
手を伸ばせば届く距離、なんだろうけれど、オレの腕では届かない。
二の腕までしかないこの腕では届かない。
そういえば、今死にそうになっているのは腕に関係していた気がする。
今回だけじゃない。
今までに何度も、この不完全な腕が原因で死んでいる。
もしもきちんとした両腕を持っていれば、死なずにすんだかもしれない。
そんなことが何度もあった。
何度も体験した。
何度も悔やんだ。
腕さえあれば死ななかったかもしれない。
腕さえあれば殺さなかったかもしれない。
腕さえあれば守れたかもしれない。
いや、例え完全な両腕を持っていても、覚醒した軍人と大馬鹿ヒーローには敵わないか。
あの二人が相手じゃ腕があろうとなかろうと、結局は死ぬしかない。
我ながら馬鹿なことを考えたものだと苦笑する。
ああ、意識が薄れてきた。
何度体験しても死ぬ直前のこの感覚は慣れない。
明日生き返ったら一番に、軍人と英雄に文句を言いに行こう。
そして願わくば、この不完全な両腕が完全なものになりますように。
(どうせ叶わないことは知っているけれど
最期くらい願ったっていいじゃないか)



09.09.15

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!