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無くしたもの

「お前のためだったら消えてもいいって思うんだ」

いつもと変わらない穏やかな口調で、黒神は静かに言った。

「お前がオレを愛してくれた。お前がお前を愛せるようになった。──もう十分だ」
「違う!!俺は自分を愛せてなんかいない!!だから」

消えるな、という言葉は出なかった。
言葉にする前に黒神に口付けられたから。

「消えるわけじゃない。オレとお前に分かれる前に戻るだけだ」
「いやだ…いやだ!!」

伸ばした手は黒神の体をすり抜けた。

「黒神!!」

崩壊が止まることはなく、黒神の体が粒子となって散っていく。
涙が溢れて視界が滲む。

「戻らなくたっていい…愛せなくたっていい……だから」
「MZD」

もう触れられないはずなのに、合わせられた額から黒神の体温が伝わってきた。

愛してる




──満たされている。
唐突にそう感じた。
無くしたモノを取り戻した。
欠けていたモノが戻ってきた。
そんな満足感に満たされた。
MZDでも黒神でもない“神”としての存在を取り戻したのだ。
自己に対する愛情と、他人に対する愛情。
両方を取り戻せて嬉しいはずなのになぜ、

「どうしてこんなにも寂しいんだろうな」


(笑うしかないだろう!!)





モザイク/ロールを聞いてたら降ってわいた話。
自分の中の設定では、黒神はピッコロさんみたいな存在。
MZDと黒神が合体して元の神様に戻ったけど、ベースはMZDで黒神としての自我とか存在とかは消えちゃってなんだか寂しいよっていう話が書きたかった。
ハッピーなバッドエンド

11.05.28

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