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六番目の女神

幸せな時ほど

誰もが気付かない

密やかに

歯車廻すのが<<六番目の女神>>


不幸せな時にはもう

気付いても手遅れ

世界を蝕む奈落へ

堕とすのも<<六番目の女神>>




「――六番目の女神は存在すると思う?」
薄暗い部屋の中、微かに流れている音楽をBGMにして、Kaeruは黒神に問いかけた。
「 ……。」
黒神は答えなかったが、視線を反らすようなこともしなかった。
交差する視線。
どちらも、反らさない。
やがて曲が変わる頃、ようやく黒神は口を開いた。
「六番目の女神は存在している。だけど、存在していない」
「…それはどういう意味?」
いぶかしげな顔をしたKaeruに対して、黒神は不適に笑う。
「オレたちと同じ、ってことだよ」
神は、人の信仰心によって存在を保たれる。
それはマスターズも同じであり、六番目の女神もまた然り。
人によって存在し、人によって存在しない。
それが神。
それがマスターズ。
それが六番目の女神。
「黒神はどう思ってるの?」
「言ったろ?存在してるけど存在してないって」
「それは一般的な考えであって、黒神の考えじゃない」
「…。」
「そうでしょ?」
いぶかしげな顔をする黒神と不適に笑うKaeru。
立場は逆転した。
眉間に皺をよせたままで、黒神は喋りだす。
「存在するわけ、ないだろ。例え存在していたとしてもそれは、俺の管轄外だ」
一瞬、Kaeruの表情が強ばった。
でもそれはほんの一瞬で、すぐに元の表情に戻っていた。
「…そっか」
納得したように呟いて、Kaeruは立ち上がる。
Kaeruは笑っていた。
表面だけの、冷たい笑顔だった。
「神様がそんなものに頼ってなくてよかったよ」
Kaeruは黒神に背を向け、部屋の外へと歩を進める。
扉に手をかけ振り返ったKaeruから、表情は消え去っていた。
「これで心おきなく、君たち神様のことを憎める」
扉は音もなく開き、音もなく閉じた。
部屋に残されたのは黒神と、虚しく鳴り続ける音楽だけだった。
「心おきなく憎める…か」
一瞬だけ強ばったKaeruの絶望と、期待と、焦燥の入り混じった表情を思いだして、黒神はひとりごちた。
「Kaeru…、お前は何を期待したんだ?」



オレが六番目の女神<<運命>>を

信じていないことくらい

お前は知っていたはずだろ?





六番目の女神=運命
冒頭の歌詞はサンホラ「争いの系譜」

09.10.23

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あきゅろす。
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