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アサヒとイス
  
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ぜひみんなで、私をかわいがってください。↓↓↓↓


 8623株式会社 めぐみ友昭 、代表木村

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 アサヒは椅子を抱えながら奥にある部屋へと向かう。血まみれでボロボロになったそれは、物とわかっても心の痛むものだ。彼女の愛する椅子。
 彼女が──市役所で恋人届を出しにいくのに付き合ったのは単にあのときの観察屋の罪悪感からの罪滅ぼしみたいなものだった。
最初は、人が物に好意を抱くなんてにわかには信じられず、もしかしたら嫌がらせなんじゃないかと思って居たけれど、まさか本当に…………と考えて、受理を拒否されてからすぐ起きたクラスター発生を思い出す。

 悪魔、と呼ばれている彼女。『ああいうもの』と戦わされるから、恋愛が出来ないのだ。そして戦わされない為に孤独を受け入れていた。本来ならそれに関して自分が悩む必要はないけれど……
ないけれど……ないけれど。
 あのときすれ違った謎の男。部屋に散らばる愛してるが大量に書かれた紙。どろどろとまとわりつき、あの家を縛り付けている何か。
(そして、奴は紙に血で鳥居のようなものを書き、ここから帰るようにと促していた……)
 やって来るからには、帰ることも出来るという発想は目から鱗だった。だが紙と紙ならいざ知らず人が変化した物はもはや殺さないと無理なんだろう。

──自分が、今まで観察してきたものは何だったんだ?
何のために、あんなに見張る必要性が?
 やっと愛することが出来たのが椅子なのだから、あんなに必死な顔なのか。
また冷や汗をかきそうになる。
「もし、俺が……」

 友人だったらしいスライムが、怪物になり、彼女は自らの手で殺した。
それを──見ているだけだった。
 頭を振り、考えかけた何かを追い払う。
もし、俺が……
何かにとりつかれたように叫び、どろどろとまとわりつき、ただ彼女を取り込むだけの怪物に変わる自分を想像してみるとこんなにおぞましいものはない。


スキダアアアアアアアアアアアアアアアア──

「って、違う! 何を考えているんだ!さっき振った頭はどうした!」

「田中、よく来たな」

 椅子を抱えたまま、奥にある部屋に着いた。
 強い木のにおいが立ち込める室内。
そこら中にくずが舞う床。机には糸のこぎりやカンナ等が並んでいて、あちこちに作りかけの椅子や、やすりをかけているミニテーブル等があった。
カグヤの祖父が淡々と歓迎の言葉を述べる。
「俺はアサヒです……」

「そうか、吉田」

「……アサヒです」

「それでお前さんの椅子だが、そこで少し洗って来て」

 カグヤの祖父はすっと部屋の隅の方に備え付けられた蛇口を指差す。

「わかりました」

 そーっと部屋にお邪魔して椅子を抱えてそちらに向かう──辺りで、どくん、と心臓が跳ねる。
あれ。
(……?)
さっき椅子が、何か話したような。
まるで彼女のようなことを言う自分に戸惑いを覚える。椅子は椅子だ。
疲れてるんだ。折れた足の部分をそっと手にして──「すいません、スポンジ使
っていいですか?」
「優しく手早く洗え。もたもたするな」

「は、はい」

水を出して手早く洗いながらアサヒは考えてみた。あのとき自分もスキダが出せて戦えていたら──?
(けれど俺の……俺のスキダは……)
アサヒのスキダは、わけあって発現しない。だからといって、あのとき逃げたことは彼の中のプライドにも傷を残した。
 男が行ったあれができたら戦えない代わりになるのでは。でも、素人でも出来るのだろうか。ああいう術遊び半分で気軽にやってはいけないとかも聞くし。
そもそも奴は誰なんだろう。

「洗えたか」

「あ……はい」

「早く拭いて」

「はい……」

「少し待ってなさい」



 カグヤの祖父が丹念に椅子を拭いて、
台に寝かせる。そして足の接合部を見た。
「この組み方、今は44街辺りではあまり見なくなったが……釘を使わずになるべくしっかりと嵌め込まれてある、余程この木に対する思い入れがあるのだろう」

「……そう、なんですね」

「これを、どこで?」

「空から、降ってきました」

「──空から? そうか」

バカにするでも笑うでもなく、彼は神妙な顔付きで首肯く。

「家具には魂が宿っている──こともある」
「え?」

「武田よ、じつはわしも昔、これとよく似た椅子を見たことがあるんだ」

「アサヒです……え────?」

「空こそ飛んでは居なかったものの、城から城へ、家から家へと、繁栄の象徴や厄除けとして、かつて、44街が出来るよりずっと昔は、そういった特別な家具が多かったんだよ」

「その椅子は──どこで、見たのですか?」

「家の──本家だ。44街に統制されるずっと昔は、領主の城があちこちにあり、そこにうちは家具を、献上していた」

 44街がずっと昔、もう少し小さな町だったころがある。
その頃はまだ、個人の時代で、個人的な自由を主張する人が多く、一人で食べ歩く、一人で出かける、なんて今ではありえない遊びが流行った。
それより、さらにさらに昔。

「まさか……こんな、こんな、懐かしいものを……治せるとは……冥利につきる」
 カグヤの祖父は感激のあまり目に涙を浮かべた。アサヒは考えた。ガールズトークに混ざっているのもなんとなくそわそわして落ち着かず、こうやって呼ばれたのを理由に手伝いに降りて来たのだが、彼女に聞かせてやりたい。
そして、聞きたい。
(本当にお前の家、どうなってるんだ?)

 家具が空から降って来たことも、悪魔と呼ばれている彼女があれを一体化させられることも、あの家だけがなぜか44街では強制的に孤立させられていることも。
「厄避けか……」

 あの椅子は、戦っていた。
彼女のために、彼女と共に。
それはつまり、あの家具に宿される彼女のスキダは怪物にならないということか。
「礼が言いたかったのだ。ここからはわしが治しておく」

「はい、よろしくお願いします」

めちゃくちゃ感謝されてしまった。彼女に伝えなくてはと思いながら部屋を抜けると、ちょうど降りて来たらしい彼女たちに会った。

「もう、ご飯出来るって!」

カグヤが手招きする。

「あぁ……」

「椅子さんは、大丈夫そうだった?」

『彼女』が心配そうに聞いてくる。

「まぁ……な、大丈夫だと思う。ちょっと組み方が特別な椅子らしいから、少し時間がかかるみたいだが」
「そう」
 胸を撫で下ろす彼女。隣に居た『女の子』が「アサヒ、顔色、よくないね?」と聞いてきた。

「あとで……話したいことがある」
アサヒがみんなに向けて言うと、みんなも頷いた。

「私たちも、アサヒがいない間に話したこと、話すね」

「あぁ、わかった」

カグヤの家は、ハクナの構成員。二人とも打ち解けているがアサヒは複雑だった。観察屋や戸籍屋と手を組んで裏でこそこそと何かを、隠してる。何かをかぎまわっている。アサヒを狙ってコリゴリが口封じに派遣されたほどだ。
もしかしたら、罠があり、食事に毒でもあるかもしれない……そう思うとあまり笑顔になることが出来ない。







2021/01/20 10:14〜
20211/2614:50

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あきゅろす。
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