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買い物(20218/11追加)

 ある日の、私が買い物からの帰り道、砂糖を買って、家に向かっていると、たまたま、椅子さんが出歩いて、女の子たちと会話しているのを見つけた。

 普段、事情があってあまり出歩いてはいない私は、椅子さんが自由に女の子たちと話をしていたことに頬を膨らましたくもなるが、努めて我慢して、近くまで行く。何かが起こったら、フォローしなければ。

 と、思うが、そんなある種緊張感を持って見守っているぼくの耳には、ずーっと、
夕飯の献立メニューの相談が聞こえ、何やってんだっけ、とぼんやりしてしまう。
だけれどなぜ話し込んでいるのだろう。女の子は椅子さんをなでなでしている。
カグヤたちも控えめに椅子さんの頬をつつく。
椅子さんはしばらく目を閉じて、抵抗せずに弄ばれていた。

「椅子さん」
口々に呼ばれ、椅子さんはガタッと首を傾げる。

「なあに?」

「ううん、椅子さんって、素敵だと思ったの」

女の子たちが揃って椅子さんを持て囃す。

「ガタッ」

椅子さんが照れながらそう言った──あたりで見つかった。

 砂糖を抱えたまま、まあ、特に隠れてないけれど。曲がり道の角からじっと見ていたぼくを見つけて、椅子さんは、おーい、と手を振る。
「椅子さぁん……なんの話をしてるの?」

仕方なく近くまで行くと、女の子たちは、なにかを察してか、どこかに散って行った。

 それを見届けて、椅子さんは笑った。
「お帰り!」

どこか、嬉しそうな顔に見えていた。だから、嬉しかった。

「……あ、うん。もしかして迎えに来てくれたの?」

まさかと思いつつゆっくり聞いてみる。
椅子さんはきょとんと私を見て、それから言った。

「夕飯、作ろうと思ったんだ。でも、何がいいかわからなくて」


「そうなの?」

「ガタッ、ガタッ」

嬉しい。椅子さんは私を呼ぶ。
私はちょっとだけ、歩幅を緩めた。

-END-

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あきゅろす。
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