勉強 (20218/11追加)
椅子さんは寂しがりやでちょっと用事があり部屋から出て、戻って来ると、いつの間にか後ろに居て睨まれていたりする。
わりとすぐ機嫌がなおるので別に不便はないけど。
「ガタッ?」
部屋で課題をしていたら、急に入ってきた椅子さんに声をかけられた。
「うん。少しずつ、いろんなことを知らないとね!」
答えると、椅子さんはきょとんとしたままで、首をかしげた。
「ガタッ」
「だめだよ〜、もうちょっと、待っててね」
「ガタッ……ガタッ」
「表現変えても一緒だよ」
「……」
最近はやたらと私にに触りたがる。理由を聞いてみても『ガタッ』(以下略)だそうだ。
……まあ、そんな感じだ。
もう一度、待ってて欲しいと言いかけたけど、やっぱりやめた。案外、私が徐々にスキダを叩くことに慣れてきたのと、どこか心境が似ているのかもしれない。
思い入れがある、みたいな感じだろうか。ちょっと嬉しくて、ちょっと寂しくて──いつかは、こんな怠惰も終わるのだと知っている。だから、現実を直視出来ない。勝手に幸せになっていってくれと思うし、いつまでも昔のままならいいのに、とも思う。
「あったかい……」
後ろからのしかかってくるのを無視して課題をする。なんだか肩が重たいが、鎧を着てると思うことにした。──のだが。
「ガタッ」
……問題を解くごとに鎧がいちいち指摘してきた。
「──い、椅子さんって、お勉強も出来るの!?」
書き直すと、さらにのしかかってくる鎧が重くなる。折れそう。
「ガタッ」
「ち、ちゃんとやるってばー」
怠ける場合ではないと言われて慌てて答えるとなぜか、椅子さんは嬉しそうに笑った。机に向かう私の髪をそっと撫で付けて、ご飯を作ってくるーと言って出ていく。
「……いってらっしゃい」
平和な昼下がりだった。
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