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欲したのは目が眩むほどの陽の光
過程
「おんっせぇーん!!」

かわいらしい声二つ。
そんな乙女二人の小脇には、簀巻きにされた子供ふたつ。





「ねえ、シナちゃん」
「なあに、シノちゃん」
「温泉がいいと思うの」
「それはいいわね」
『それじゃ、温泉に行きましょうかvV』

彼女たちのお花飛び交う、かわいらしい会話が執り行われているのは木の葉の里が長、火影の執務室。
毎度よろしく、修理したばかりの扉を蹴飛ばし飛び込んで来た二人は、部屋の主になど目もくれず手にしていたいくつもの資料を広げだす。
あーだこーだと二人で会話している間は、どんなによかったか。

物を壊したり、人を脅したり、人を締め上げたり拷問したり闇取引したり(ピーッ)したり(ピーッ)したりさえしなければ、ただの可愛い里人。
それどころか、恐ろしい里のトップ二人の手綱を、他がいい害に唯一握れる方たち。
丁重に丁重に、それこそ国賓かと言うくらいの扱いをしたってかまわないとさえ思う。
けれど、そんな扱いで自分たちの思うように動いてくれる彼女たちじゃない。
とんだ暴れ馬・・・否、暴れ恐竜だ。

彼女たちの一挙一動に冷や汗ものの火影は、それでも気付かぬふりして書類に目を通していた。
そんな時。
ズガンッなんて人が鳴らすものとは思えぬ程の音を立てて、彼女たちの足形の弾丸が執務机を貫いた。

自分にぶつかり、二つに割れた机が、音を立てて後ろの壁にぶち当たって砕け散る。
冷や汗の噴水だ。洪水だ。
だばだばと流れ落ちる汗に、泳ぐ視界。

「無視しないで、火影様」

顎を捕まれて、強制的に視線は彼女たちを捕らえさせられる。
あまりにもにこやかな二つの顔に、火影はただの老人のおびえが最優先された。

生きていた時点で、ミナトに譲るべきだったこの席。
里を大切に思いはするけれど、あやつなら譲るのは問題ないと思っている。
それは確かに今でも変わっていはいない。
たとえあいつが底なしの子煩悩&愛妻家で、その結果、里トップの息子に連休を与えようとしてもだ。

そして、今、まさにかつてないほどにあやつに火影をさせておけば良かったと後悔した。
こんな恐ろしい娘っ子二人、わしに対処しきれると思うでない!!!
火影の思考はすでにおかしくなっていた。
目がぐるぐると回っているように思う。
それどころか、あれれおかしいな?世界がゆがんでるよ。

「だからね、わたしたち」
「あの子たちと、温泉に行きたいの」
「構わないわよね、火影様?」
「あの子たち、いっつも”あなたの為に”過重労働してるんだもの」
『ねっ?火影様っv』

にこっ☆
これほど恐ろしい笑顔、あるだろうか。
全身の血の気が引くどころか、そのまま皮膚突き破って逃げて行くんじゃないかとさえ思うほどに真っ青になった火影。
そのまま失神してしまうんじゃないかと思われたけれど、先に察した彼女たちが彼の顔のすぐ横を殴った事によって意識が引っ張り戻される。
すぐさま首ふり人形もびっくりな首ふりを見せた。

「ほんとうっ?」
「やったわね♪」
『それじゃ、一週間、あの子たちは借りて行くわねvV』

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あきゅろす。
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